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家庭用ゲーム機不振の変わらぬ真因

2012年2月8日(水)

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任天堂が2011年2月に発売した家庭用携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」

 任天堂が2011年1月26日に公表した2011年4~12月期の連結売上高は5561億円で、前年同期比31.2%の減少だ。2011年2月に家庭用携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」を発売したが、売り上げは伸びなかった。昨年8月に販売てこ入れのため、2万5000円から1万5000円に3DSの価格を引き下げたにもかかわらず、全世界で1600万台だった販売目標も1400万台に引き下げている。

 ライバルのソニーも2011年末に携帯型ゲーム機「プレイステーション・ヴィータ」を日本で発売してゲーム事業の底上げを図ったが、成果は見えない。2011年4~12月の同社のゲーム機の販売台数は世界で2140万台。前年同期の2370万台を大きく割り込む。同社は国内に限った販売台数を公表していないが「国内外とも減少傾向だ」と説明する。2011年4~12月の売上高も世界で5751億円と、前年同期6365億円から39.6%減少した。

 円高の影響はあるにしても、任天堂とソニーという2大メーカーの新製品が出そろった最初の年末商戦としては、少しさびしい結果になった。

国内ゲーム市場は4年連続縮小

 国内市場を見ると、家庭用ゲーム市場の縮小は最近に限ったことではない。ゲーム専門誌発行のエンターブレイン(東京・千代田)の調査で2011年の同市場規模は4543億円で、2007年から4年連続の減少だ。

 2007年の6886億円と比べると33%の落ち込み、市場は3分の2程度になったことになる。内訳はゲーム機などのハードが1797億円、ゲームソフトが2746億円だ。昨年比でハードは2.4%増えたものの、ソフトは13.7%減少している。

 最近、家庭用ゲーム機不振の理由としてよく指摘されるのが、スマートフォン(高機能携帯電話)用ゲームや、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用したソーシャルゲームの広がりだ。調査会社の矢野経済研究所は、2011年4月~2012年3月期のソーシャルゲームの市場規模を、前年同期比83.6%増の2570億円と予想している。

 ただし、ソーシャルゲーム市場拡大の影響で家庭用ゲーム機の販売が不振になっているとは、現時点ではいいきれない。エンターブレインの浜村弘一社長は「現時点では、家庭用ゲーム機のソフトとスマホ向けゲームやソーシャルゲームは全くの別物。家庭用ゲームのファンがなびくとは考えづらい」と語る。

 では2011年度にゲーム機販売が伸び悩んだ真因は何か。最大の理由は有力ソフトの販売の出遅れだ。

 3DSの発売当初、任天堂はマリオシリーズのソフトを発売していなかった。サードパーティー製ソフトの販売を支援する目的だったともいわれるが、ハード本体の売り上げは伸びなかった。3DSの値下げ後、任天堂の有力ソフト「スーパーマリオ 3Dランド」と「マリオカート7」や、カプコンの「モンスターハンター3(トライ)G」が発売になると、販売は挽回し始めた。

 プレイステーション・ヴィータは発売時に各社から24種類のゲームソフトを揃えたものの、後が続かない状況だ。東京都内のあるゲーム販売店の店員は「販売当初の人気はすごかったが、その後、客足は沈静化している。ソフト本数はそこそこあるが、プレイステーション・ヴィータならではのソフトがないのが原因ではないか」と話す。

 新しいゲーム機が発売して、しばらくして有力ソフトが揃う。このタイミングを見てゲームファンが購入に走るという構図に変化はないというのだ。

2012年は回復基調か

 ゲーム機にはライフサイクルがあり、新製品が出た直後からしばらくは市場が盛り上がるが、その後は縮小する。2007年も任天堂のWii、ソニーのプレイステーション3などの新製品発売後で市場が活性化した。

 この見方に従えば、ゲーム機市場は2011年を底に2012年以降、市場は回復することになる。ゲーム業界に詳しいSMBC日興証券の前田英二アナリストは「今回もゲーム機のライフサイクルに合わせて市場は活性化していくだろうが、前回のピークだった2007年の水準まで戻るかは疑問だ。任天堂はWiiで新たに取り込んだユーザーを、今後も獲得できるかが問われる」と指摘する。

 今後はスマホやソーシャルゲームの影響が大きくなってきそうだ。任天堂やソニーにソフトを供給するゲームメーカーは、スマホやソーシャルゲームの開発に力点を置き始めている。有力ソフトが販売を左右するゲーム機の世界で、ソフト開発が滞るようになれば、販売が伸び悩む可能性もある。

 既に任天堂とソニーはモバイルとネットワーク機能を強化すると明言。また任天堂は今年、液晶画面付きの斬新なコントローラーを備える新型ゲーム機「Wii U」を発売する予定。ゲームの新たな魅力を掘り起こし、ユーザーの拡大を進める。

(宇賀神 宰司)

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