記者の眼

動き出した「塩漬けの土地」

地方にカネを流し始めた再エネ


  • 山根 小雪

  • 2012年9月25日(火)

 「この場所は長年の懸案だった。それを克服できるメガソーラー事業に、最大限の協力を惜しまない」――。

 野坂康夫・鳥取県米子市長は、SBエナジーの孫正義社長と並んで、感慨深げにこう話した。8月29日に開かれた記者会見での1コマだ。

8月29日の会見にはSBエナジーの孫正義社長が登場(写真中央)。左端は野坂康夫・米子市長

 ソフトバンクの子会社であるSBエナジーは、鳥取県米子市に「ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク」を建設すると発表。ソフトバンクと三井物産でプロジェクトファイナンスを組成し、米子市崎津地区の約53万4000平方メートルの敷地に、約3万9500キロワットのメガソーラーを建設する。2013年7月の稼働開始を目指し、9月中に着工する。

 実はこの土地、「40年近くも全くの未利用だった」(孫社長)。農地干拓事業として開発するも塩害などで活用されず、その後、工業用地に転換した。だが、工業用地としても使い手がいないまま、歳月が流れた。野坂市長が「長年の懸案」と言うのもうなずける。メガソーラー建設を志向する孫社長から話を持ちかけられたときは、藁をも掴む思いだったのだろう。

土地代を激安にしてでも使ってほしい

 その米子市の思いは、メガソーラー用地の賃料にも現れている。通常、土地の賃料は広さに応じて、固定額で支払うもの。ところが、今回のケースでは「賃料は売電収入の3%」なのだ。メガソーラーは、再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」の下、発電した電力を売電することで収入を得る。

 ある自治体関係者は米子市の賃料を、「非常に安いし、金額も安定しない。土地を貸す側としては極めてうまみが少ない」と言う。実際、孫社長も「採算性は平均よりも良い」と認める。

 メガソーラーのリスクは、日照量がどの程度あるのか明確には想定できないことだ。仮に目算よりも日照量が少なければ、売電収入は想定よりも少なくなる。「売電収入の3%」という賃料であれば、売電収入がたとえ少なくなったとしても発電事業者はダメージを負わない。発電事業者にとっては、極めて低リスクの事業だ。

 言い換えれば、これだけ事業者とって“美味しい”手段を選択してでも、米子市はこの土地が動き出すことを優先した。メガソーラーが「塩漬けの土地」に命を吹き込んだとも言える。