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ニッポン改造計画~この人に迫る

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19兆円の行政のムダを排除せよ

穂坂邦夫・地方自立政策研究所理事長 インタビュー

田村 賢司

――財政再建には国と地方の統治機構改革が欠かせないと主張している。

穂坂:日本の行政は巨額のムダを生んでいる。そのムダは国の大きな負担になり、財政再建の足かせになっている。

 ムダを生む大きなものの1つは、国と都道府県、市町村という3層構造の行政間での役割分担の不明確さや、国・自治体と民との役割分担の意識のなさなどだろう。

 国と地方の行政経費(歳出総額)は年間約160兆円にも上っている。その内訳は、国は66兆円、地方は94兆円といったところだが、我々はその中に18兆9000億円のムダがあるとさえ試算している。

 例えば国の役割とは何か。外交、防衛や経済政策、金融政策、社会保障の基本政策などだろう。ところが、国が個人の生活に近い内政的業務まで受け持っているものが少なくない。

 ハローワークなどもその1つ。「広域的運用が必要だから」と言って国が運営しているが、実際にはそんな風に行われていない。本来、求人の掘り起こしや休職者支援などはきめ細かい作業が必要で、都道府県などの現場により近いところがやればいい。そんなことが効率を損ない、ムダを生み出している。

国が地方財政補填の仕組みに問題

――都道府県と市町村の間はどうか。さらに、似た事業をそれぞれで行っているが。それと、中央集権がもたらす弊害も詳しく。

穂坂:確かに都道府県と市町村の間は、似たような事業が少なくない。老人クラブ活動助成など高齢者への支援事業、産学交流、土地開発公社、大学などの公開講座支援…。挙げればきりがないが、突き詰めて言えば、都道府県の役割が不明確なせいでもある。

 都道府県は今やもっと広域的な仕事に特化すべきで、それ以外の多くの仕事は市町村に任せていい。警察にしても、都道府県単位では広域化する犯罪に対応しきれなくなっているし、河川の管轄なども国と県で分かれるなど意味がない。これらもより広域的な行政単位ができれば、国がやる必要はない。その意味では道州制に変えた方が良いということになる。

 自治体の構造の問題もあるが、結局は現在の国と地方の財政は、歳入では国と地方が55:45になっているが、歳出では41:59と逆になっている。そのギャップを賄うのが国から地方への、地方交付税交付金や国庫支出金などの支出であり、この構図が中央集権の弊害をもたらしている。

――地方は、基本的に必要な行政費(基準財政需要)と収入(基準財政収入)の差額を国から交付税で埋めてもらえる。そのせいで、ムダを減らす意識が甘くなるということか。

穂坂:そうだ。仕事の分担が3層で不明確な上に、おカネは国の方が多く集め、それを地方に配るから、地方はどうしても自己責任の意識が薄くなる。国に認めてもらえる事業を実施すれば補助が付くし、起債も出来る。その起債の償還は将来、国が交付税で賄ってくれる。そこに、国が行政の方向を決め、地方はそれに従うという中央集権システムが生まれ、同時にムダが生まれるというわけだ。

 中央集権で言えば、教育委員会も国の指示に忠実に従うことばかりで、地域にあった独自の対策を機敏に行うということがない。いじめ問題などの対策が常に後手に回るのも、一因はそういう体質にあるのではないか。

 我々は、(1)そもそも公の仕事として必要なのか、(2)民間に任せた方がコストを削減できるのではないか、(3)国の事業を地方に移管した方が効率が良くなりコストも下がるのではないか、(4)補助金を一括交付金化するなど地方の裁量を増やした方が効率が良くなるのではないか――といった視点で、行政のムダを分析した。

 先ほど話した18兆9000億円は、そこから見えてきたもの。そのうち、多くは都道府県と市町村の側にあるが、(1)から(3)の項目は、それぞれ3兆5000億円から5兆1000億円に上るという試算になった。

民主党型の事業仕分けでは足りない

――国・地方、官と民の役割の明確化を元に行政の効率化を図るとなると、歳入構造の作り直しも必要になる。

穂坂:もう1つのカギはそこだ。今、国は所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税の5税のそれぞれ25~32%を交付税として地方に渡すなどして、地方財政を補填している。

 道州制の導入で「都道府県」的存在の役割を作り替えるとともに、3層の行政の役割分担を明確にし、歳入構造もそれに合わせることが必要だ。そのためには、まず国と地方の税配分の大枠を見直し、事業量(公共サービス)に合わせた歳入割合にすることが大事だ。さらに、地方間(道州間)での税の偏在を是正するために、毎年それを調整する第三者機関のようなものを設ける必要もあるだろう。税収の豊かな地域からそうでない地域への税収移転は行わざるを得ないからだ。

――それは相当に難しいだろう。現在でも地域偏在性の大きな法人事業税の一部を国が再配分しているが、税収を移転させられる東京都などの不満は大きい。

穂坂:しかし、財源の調整は必要不可欠だ。同時に分権(役割分担の明確化)改革でコスト削減を図り、国全体の負担を減らせるようにしないといけない。ドイツも地方間で財源を調整する仕組みを持っていると聞いている。

 民主党は事業仕分けをしたが、事業ごとに必要かどうかだけの判断では足りない。繰り返して言うが、仕組みから作り直さなければ効果は知れている。相当難しいのはその通りだが、もう、統治機構にまで踏み込んだ大胆な行財政改革に取り組まなければ、日本はもたない。