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経営新世紀〜ITが生み出す企業競争力〜

一番優秀な学生はベンチャーを作る

 かつてインテルUS本社の幹部会で人事担当副社長がボヤいていた。「一番優秀な学生はベンチャーを作り、次に優秀な学生はベンチャーに就職する。そして、全然だめなのがインテルのような大会社に来る。困ったことだ」という訳だ。もちろん、主としてIT分野の話である。ところが、99年ころには状況が一変し、「一番優秀な学生はGoogleに就職するようになった」という。

 先日、私が社長を務めるモバイル・インターネットキャピタルのファンド集会を開いた際、参加者へのサービスとして、いま、インターネット業界で一番旬のテーマである「Googleは何をしようとしているか」をGoogle日本法人の村上社長にご講演をして頂いた。超多忙の村上社長が、「義理のある西岡さんの要請では断れません」とGoogleの戦略やそれを可能にするGoogleの秘密を楽しく話してくださった。

 ご講演の後での質疑の中で村上社長は、「日本の大学でもIT分野の最も優秀な学生がGoogleに就職する傾向が顕著で、多くの大学教授から、『Googleが優秀なのをみんな持っていく』と叱られます」と言っておられた。Googleの研究開発センターは世界各地にあり、日本は世界で4番目に設立された。そこでも最優秀の学生が集まっているということは、世界中で優秀な学生がGoogleに就職していることになる。世界中で最優秀な学生が自分でベンチャーを起業せずに、ベンチャーから大企業にのし上がったGoogleに就職する。何故だろう?

 答えは決まっている。GoogleにはITの研究開発のための世界最高のファシリティが完備されているからである。それはネットワーク化された世界最大のコンピュータ・システムだ。世界中のインターネット上の膨大な情報をキーワードに基づいてたちどころに検索するソフトウェア技術を持ち、新技術を研究開発してユーザーに提供し続けるGoogleは、研究開発に用いる膨大なコンピュータ・システムを低価格で実現するために、全て手作りしているという。膨大な規模のコンピュータ・システムを構築するのに市販のコンピュータを利用していてはコストも膨大になる。そこで、GoogleはインテルやAMDから旬の過ぎたマイクロプロセッサーを捨て値で大量に購入して、世界最大規模のサーバーを手作りで構築して活用しているのだ。

 このものすごい規模のサーバー環境は若いIT技術者にとって大いに魅力的な研究環境なのである。最優秀な学生がGoogleに就職するのは高給やストックオプションのような報酬だけが理由ではない。どんなに優秀な研究者でも研究環境が貧弱では、本来可能な研究が不可能になり自分の能力を限界まで活かせない。Googleの研究環境ならどんなトッピで奇想天外な発想でも実現させて、世界中のインターネット・ユーザーを狂喜させることが出来る。他の大企業では短期に利益に繋がる研究しか、させてもらえないが、Googleなら自由闊達に夢を追わせてもらえる。彼らにとってこれほど嬉しいことはない、世界最高の働く環境なのである。

 自分のベンチャーを起業するのはGoogleでWeb2.0のインターネットの世界を十二分に体験し、技術のトライアルをして技術力を高め、ビジネス能力を磨き、最適のビジネス・パートナーを見つけてからでも遅くはないのだ。

(第6回は、6月29日に掲載予定です)

モバイル・インターネットキャピタル株式会社
代表取締役社長

1969年大阪大学工学研究科(通信工学)修士課程修了後、シャープ株式会社入社。同社技術本部コンピュータ・システム研究所所長、情報システム本部副本部長を経て1992年にインテル株式会社(日本法人)副社長に就任。1993年社長、1997年会長を歴任し1999年4月に退任。同年、モバイル、インターネット関連のベンチャー企業育成、新事業創出を目的としたモバイル・インターネットキャピタル株式会社を設立。 現在は、通産省のITSSPプロジェクトに参画し、全国の中堅企業に対し「ITの戦略活用法」を説いて回るなど日本企業の競争力向上に尽力するとともに、ベンチャー企業の経営指導にも注力している。
http://www.mickk.com/



「経営新世紀・特別コラム」のバックナンバー一覧

第10回 膨大な書類データ入力にITの本領発揮
第9回 ネットの憂鬱
第8回 Be innovative! イノベーションは誰にでも起こせる
第7回 社員が燃える新日本的経営(その2)
第6回 社員が燃える新日本的経営(その1)
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