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アップル作品鑑賞のツボ

2011年12月21日(水)

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連載第3回は、スティーブ・ジョブズが、これまでに手掛けてきた数々の「作 品」を、より深く理 解する上での「鑑賞のツボ」を紹介しよう。

his fruits――作品

perfect――完璧さ

 「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」は、数多くの工業製品を「作品」として収蔵品リストに加えている。その中でアップルほど多くの作品を提供している会社はなかなかない。アップルの製品は、ただの日常の消耗品ではなく、美術の作品としても一級の価値を持つものが多い。連載第3回は、スティーブ・ジョブズが、これまでに手掛けてきた数々の「作品」を、より深く理解する上での「鑑賞のツボ」を紹介しよう。

 アップル作品鑑賞のツボ、まず1つ目は、その「完璧さ」だ。

 多くのパソコンが、優れたデザインをうたいつつも、実は製品を裏返して反対から見たり、持ち上げてその底面を見ると、隠していたアラがポロポロと見つかることが多い。

 統一感のない色が塗られた汎用の端子類、ゴチャゴチャと貼られたシールや、どうせあまり見られないからと、気の抜けたフォントで印刷されたさまざまな表示。今にも取れてなくなりそうな安っぽいカバー。

 アップルの基準では、こうしたものづくりは許されない。初代Macintosh以降、スティーブ・ジョブズが手掛ける「作品」は背面から見ても、ごまかしなく美しいことが絶対条件とされてきた。デスクの上に置いて、視界を必要以上に遮らないMacの向こう側には、オフィスを訪問してきたゲストが座ることも多い。そのゲストに醜悪な背面を向けるわけにはいかない、という考えなのだ。

 ノートパソコンの底面にしても同じで、いくら机の上に置いているときにきれいに見えても、それを脇に抱えて歩いている時に、醜悪なネジやらシールやらが目立っていたのでは持ち主を「安く」見せてしまう。

 だから、アップルの「作品」は、法律で義務づけられた表示が「作品」を醜悪にするのをいかにしたら防げるか、どうやったらネジをさらに1本減らして、継ぎ目のないスムーズな面を広く取れるか、といった議論に尋常でないほどの時間とエネルギーをかけている。

 ノート型MacのPowerBookでは、表示ラベルを交換バッテリーのトレイに隠した。バッテリー交換機構をなくして、その分、大容量のバッテリーを内蔵、背面の継ぎ目をなくした後継モデルのMacBookシリーズでは、ギリギリまで表示の文字を小さくした。そしてiPadの背面では、各国の政府に電波法関連の表示用ロゴマークを本体に印刷しなくても画面に表示できれば大丈夫になるように交渉を続け、それでも表示が必要とされたロゴだけは、裏面デザインの一部としてきれいに印刷した。

 表層だけではない。Apple IIの開発時、「配線が汚い」と言うジョブズの言葉にエンジニアが「そんなの誰が見るんだ」と反発すると「俺が見る」と言い返したのは有名な逸話だ。実際、初期のiMacでは半透明の外装を使い、製品の内部までもデザインの一部として見せることに挑戦した。またPower Mac G5やMac Proでは、やはり、車のエンジンルームを楽しむような感覚で、外装パネルを1枚外せば、完璧に空気の流れを考え抜いた内部のメカニズムを楽しめる設計にしていた。安っぽいビニールで絶縁された配線ケーブルは1本も見当たらない。

 ジョブズはあらゆるものに「完璧」を求める。「作品」そのものの美しさもさることながら、それを作るプロセス、それを入れるケース、その商品の展示のされ方、そして宣伝のされ方、人々がその商品について語るとき交わされる言葉まで。

 そういう意味では、MacやiPod、iPhone、iPadといった個々の製品は、アップルが手掛けたもっと大きな総合芸術の氷山の一角でしかないのかもしれない。

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「アップル作品鑑賞のツボ」の著者

林 信行

林 信行(はやし・のぶゆき)

ジャーナリスト

テクノロジーが人々の暮らしぶりや社会をどう変えるかをテーマに取材をつづけるフリージャーナリスト。国内のテレビ、Web、新聞、雑誌に加え、米英西仏中韓など海外主要媒体でも日本のテクノロジー文化を伝える。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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浜田 健一郎 ANA総合研究所 シニアフェロー・前NHK 経営委員長