前回までのあらすじ
団達也は恩師、宇佐見の友人だったイスタンブールのサーディを訪ね、自分がこれからどんな事業をすべきなのか語り合っていた。この対話を経て、達也は自分が取り組むべき課題は、次世代のエネルギーの開発に携わることだと気づいた。
MTCで働いていた金子順平は、マレーシアのタンの会社に移り、タンのもとで暮らしていた沢口萌と再会した。金子は、タンの会社で新たな研究を始めるつもりでいた。
上海のリンダのもとでは真理が働いていた。真理はリンダにビジネスの現場の特訓を受けていた。
リンダの会社に、古くからの友人であるジェームスがたずねて来た。
リンダとジェームスとマリ
「ポルトガルに飛び火したようね」
リンダが心配な表情を浮かべた。ギリシャの財政再建が難航しているあおりを受け、ポルトガルの10年もの国債はなんと15%を超えてしまったのだ。同じように危機の火がくすぶっているイタリア国債の6%、スペイン国債の5%と比べて突出している。
「早く共同債構想を軌道に乗せないと、恐慌に陥ってしまうかもしれない」
ジェームスは頭を抱えた。
ユーロ共同債のことだ。欧州委員会は2011年11月、各国が発行している国債に代えて、「ユーロ圏共同債」の導入を提案した。ユーロ圏の通貨は統一されているが、財政、つまり税金を徴収して予算を実行するのはそれぞれの国が行っている。今回の危機はこの矛盾から生じたものと言っていい。
このため、ギリシャのように放漫財政の末、国債が暴落して、必要なお金を調達できない国が出てきた。財政危機はじわじわと他国にも広がっている。そこで、登場したのがユーロ圏共同債構想だ。これが実現すれば、信用のない国でも資金調達ができ、政府債務危機の拡大を防ぐことができる。
「それは無理ね」
と言ったのはリンダだった。
「結局、その共同債を引き受けるのはドイツなんでしょ。いくらドイツが金持ちだからといって、“おんぶに抱っこ”されたんじゃあ、国民が納得しないわよ」
つまりこの共同債は欧州安定メカニズム(ESM)が購入するのだが、そこにどの国が資金を拠出するかということだ。しかも、現在の資金の供給能力は50兆円。あの破綻したリーマンが抱えていた負債が約45兆円だったことを考えると、この資金量では防火壁として不十分だ。そこで、イタリアや国際通貨基金はESMの資金力上限を2倍近くに上げるよう求めている。
ドイツにしてみれば、無条件での支援できないし、共倒れはごめんだ。やるべき事は財政規律の強化ではないか、とドイツは主張する。
だが、スタンダード・アンド・プアーズはフランスとオーストリアの国債を格下げしたことで、いまや頼りになる大国はドイツだけになった。
いまのユーロ危機を救えるのはドイツしかない、との考えが日に日に増している。
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