「熱血! 会計物語〜団達也が行く season3」

第13話「財政規律を求めすぎると、景気は回復するどころか、ますます悪くなるってことね。」

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2012年2月1日(水)

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前回までのあらすじ

 団達也は恩師、宇佐見の友人だったイスタンブールのサーディを訪ね、自分がこれからどんな事業をすべきなのか語り合っていた。この対話を経て、達也は自分が取り組むべき課題は、次世代のエネルギーの開発に携わることだと気づいた。

 MTCで働いていた金子順平は、マレーシアのタンの会社に移り、タンのもとで暮らしていた沢口萌と再会した。金子は、タンの会社で新たな研究を始めるつもりでいた。

 上海のリンダのもとでは真理が働いていた。真理はリンダにビジネスの現場の特訓を受けていた。

 リンダの会社に、古くからの友人であるジェームスがたずねて来た。

リンダとジェームスとマリ

 「ポルトガルに飛び火したようね」

 リンダが心配な表情を浮かべた。ギリシャの財政再建が難航しているあおりを受け、ポルトガルの10年もの国債はなんと15%を超えてしまったのだ。同じように危機の火がくすぶっているイタリア国債の6%、スペイン国債の5%と比べて突出している。

 「早く共同債構想を軌道に乗せないと、恐慌に陥ってしまうかもしれない」
 ジェームスは頭を抱えた。

 ユーロ共同債のことだ。欧州委員会は2011年11月、各国が発行している国債に代えて、「ユーロ圏共同債」の導入を提案した。ユーロ圏の通貨は統一されているが、財政、つまり税金を徴収して予算を実行するのはそれぞれの国が行っている。今回の危機はこの矛盾から生じたものと言っていい。

 このため、ギリシャのように放漫財政の末、国債が暴落して、必要なお金を調達できない国が出てきた。財政危機はじわじわと他国にも広がっている。そこで、登場したのがユーロ圏共同債構想だ。これが実現すれば、信用のない国でも資金調達ができ、政府債務危機の拡大を防ぐことができる。

 「それは無理ね」
 と言ったのはリンダだった。

 「結局、その共同債を引き受けるのはドイツなんでしょ。いくらドイツが金持ちだからといって、“おんぶに抱っこ”されたんじゃあ、国民が納得しないわよ」

 つまりこの共同債は欧州安定メカニズム(ESM)が購入するのだが、そこにどの国が資金を拠出するかということだ。しかも、現在の資金の供給能力は50兆円。あの破綻したリーマンが抱えていた負債が約45兆円だったことを考えると、この資金量では防火壁として不十分だ。そこで、イタリアや国際通貨基金はESMの資金力上限を2倍近くに上げるよう求めている。

 ドイツにしてみれば、無条件での支援できないし、共倒れはごめんだ。やるべき事は財政規律の強化ではないか、とドイツは主張する。

 だが、スタンダード・アンド・プアーズはフランスとオーストリアの国債を格下げしたことで、いまや頼りになる大国はドイツだけになった。
 いまのユーロ危機を救えるのはドイツしかない、との考えが日に日に増している。

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著者プロフィール

林 總(はやし・あつむ)

林 總公認会計士、税理士、LEC会計大学院教授(管理会計事例)、林總アソシエイツ代表取締役。1974年中央大学商学部会計科卒業。経営コンサルティング、一般会計および管理会計システムの設計、導入指導、講演活動などを行っている。主な著書に『経営コンサルタントという仕事[改定版]』『よくわかるキャッシュフロー経営』『わかる!管理会計』『やさしくわかるABC/ABM』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『売るならだんごか宝石か』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか』『つぶれない会社には「わけ」がある』など。最新刊は『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『読む管理会計 企業再生編――「キャッシュ経営」で会社を救え!』『読む管理会計 粉飾決算編――会社の「ウソの数字」にダマされるな!』『ドラッカーと会計の話をしよう』『世界一わかりやすい会計の授業』『貯まる生活―見えない未来にそなえる家計マネジメント術』。自身のホームページの「団達也会」では、「団達也と真理と一緒に会計を語りつくそう」という会員向けのサービスを主催している。



このコラムについて

熱血! 会計物語〜団達也が行く season3

 主人公の団達也は、シンガポール大学ビジネススクールで学んだ秀才。周囲の期待を裏切るような形で、恩師の経営コンサルタント、宇佐見秀夫の薦める中堅電子部品メーカー、ジェピーに入社した。ここで粉飾決算をあばき、不正の指南をしていた当時の役員らを会社から追放した。
 その後、達也はジェピーを辞め、経理課長、細谷真理と2人で新会社MTC(Management and Technology Consulting group)を立ち上げた。主力製品は「K01」。天才技術者、金子順平が発明したリチウムイオン電池の性能を飛躍的に伸ばす部品だった。達也はアジアをターゲットとして、この新製品でビジネスをしようと考えていた。
 ところが「K01」の特許をめぐって、達也はビジネスに失敗。裸一貫で出直すことになった。達也のもとで働いていた細谷真理、沢口萌、金子順平は、それぞれの道を歩むこととなった。
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