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どんなに悪いことでも、もう起こらないという点でよい面がある

【9】想像力という病

  • アラン

  • 村井 章子

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2012年5月8日(火)

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【8】想像力から読む)

今日の一言

起きたことは、たとえそれがどんなに悪いことであっても、起こりうることの余地をなくすという点で、もう起こらないという点で、よい面を持っている。

 想像力は、中国の処刑人よりも始末に負えない。想像力は恐怖をさじ加減して、私たちにちびちびと味わわせる。本当の災厄は一撃で犠牲者をしとめるので、同じ人に二度起きることはない。ほんの一瞬前まで、大惨事など想像もしていない私たちと犠牲者はどこも変わらなかった。ところが歩いているところに車が来て20メートルも跳ね飛ばされ即死した。これで終わりである。始まりもなければ続きもない。考え始めるから悲劇は続く。

 だから、事故のことを考える私は、とてもよくない想像をしている。つねに轢き殺される寸前だがけっして轢き殺されはしない立場で想像するのである。車が来るぞ、と私は考える。ほんとうに来るとわかっていたら逃げるはずだが、犠牲者の立場に身を置いているので、逃げもしない。自分が轢かれるのを映画の一場面のように見る。それもスローモーションで、ときには止めたり、また始めから見たりして、千回も死ぬのに元気に生きている。

 パスカルは、健康な人にとって病気が耐え難いのは、まさに健康ゆえであると言った。重い病気にかかったらあまりに苦しくて、たぶんしまいには、そのときやっていること以外は何も感じなくなるだろう。起きたことは、たとえそれがどんなに悪いことであっても、起こりうることの余地をなくすという点で、もう起こらないという点で、新しい色合いの未来を指し示すという点で、よい面を持っている。苦しんでいる人は、前の晩だったら不幸だと考えたはずの凡庸な状態を、このうえない幸福のように渇望する。人間は、私たちが考えているよりずっと賢い。

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