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地獄の雄弁は人を誤らせる

【54】大げさな物言い

  • アラン

  • 村井 章子

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2012年7月10日(火)

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【53】短刀の曲芸から読む)

今日の一言

情念に欺かれないようにする秘訣は、大げさに弁じ立てないことである。

 ときどき路上で幽霊のような人に出会うことがある。この人たちはひなたぼっこをしていたり、とぼとぼと家に帰る途中だったりする。すっかり衰えていまにも死にそうなこういう人たちを見ると、私たちはすぐに耐え難い恐怖を感じ、思わず足早に遠ざかりながら呟く。人間の形をしたあの者たちはなぜ死んでしまわないのか、と。だが彼らもまた生きたがっている。だからひなたぼっこをしている。死にたくはないのだ。そう考えるのはつらいことである。私たちの思考はそこで簡単につまずき、傷つき、苛立ち、まちがった道に入り込みがちだ。

 こうした人たちを目にしたのち、どう考えるのが正しいのか、私が注意深く手探りしながら道を模索していたとき、友人の一人がやって来た。目には地獄の炎が宿り、誤った雄弁を発揮しようと武者震いしている。そしてついに叫び出した。

 「まったく、反吐が出る。健康な連中は病気や死を恐れ、そのことにエネルギーを使い果たしている。恐怖をいつまでも持ち続け、味わい尽くす。だが病人を見ろ。あんな連中は死を招き寄せた方がましなのに、一向にそうしないで逆に死を押し返している。こうして死の恐怖を病気に上乗せしているんだ。生きていることがそんなに辛いならなぜ死を恐れるのか、と君は言う。だが、死と生きる苦しみとを同時に恐れることは可能だ、君にもそれはわかるだろう。こうやって人は死んで行くのだ」

 この友人は、自分の言ったことは絶対に正しい、と信じているようだった。この私にしても、同じように考えたかもしれなかった。不幸になるのはむずかしいことではない。むずかしいのは幸福になることである。だがそれは、幸福になるのをあきらめる理由にはならない。むしろ逆である。諺にもあるように、価値のあるものほど手に入れるのはむずかしいのだから。

「「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」毎日読むアラン『幸福論』」のバックナンバー

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