• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「さあ、今度はどのような字を覚えたのかな?」

【27】第六章 蔡ヨウ(巛-邑)3

2012年9月26日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

【26】第六章 蔡ヨウ(巛-邑)2から読む)

 「父上、昴(すばる)という字も、書けるようになりました」

 娘のエン(王/炎)が、不要な書面の裏側を使って、習字の稽古(けいこ)をしている。父親の蔡ヨウ(巛-邑)に似て、彼女も文に長(た)けた一面があるようだ。

 揚州は長江下流の北側で、洛陽よりも暖かい。彼はこちらへ亡命してくるとき、実は身一つで来たのではない。妻も娘も引っ張ってきていた。いや、逆に言えば、彼女たちがいたゆえ、宦官の毒牙から逃れようと思ったのである。

 儒教の教典を正す作業をしていたときが、彼の一番生き生きしていた時期だった。だから妻を娶(めと)り、娘もできた。

 家族ができたことで、かつてのように晴耕雨読(せいこううどく)の境地で日々を送るわけにもいかず、彼は仕事を探した。だが、力仕事は不得手だった。

 そこでじっくり考えて、子供たちに文字や文章を教える塾を開いた。当時のことであるから、役人の許諾など必要なかったろう。要は、世が安定しているかに生活がかかった。

 周辺は孫堅の勢力下で、比較的安定していた。それでも、太平道の布教活動はそこここ見られた。ただ、勉学に励みたいという少年も多く、塾はそこそこ繁昌していたのだ。

 朝廷の噂は聞こえてくる。皇帝宏が後宮に模擬店を出して、市井の商売を体験しているらしい。それは市場経済の実践ではなく、姫妾たちを面白がらせるためだけらしい。

 宦官から、いいように操られている皇帝らしい遊びだ。だが、そのような暢気なことをしているうちに、太平道が宗教暴動ともいえる黄巾の乱を起こした。揚州でも多少の戦火はあがったが、孫堅が出馬して鎮圧した。

 そして、彼はもっと西方へと遠征していった。また、少し北のショウ(言/焦)国からは、曹操が出てそこそこの活躍をしていると伝わってきた。蔡ヨウ(巛-邑)は、その名にも聞き覚えがあった。それは、彼を引き立ててくれた橋玄が、見たこともない人相をした若者だったと、さも感心したように語っていたことがあったからだ。

 しかし、彼を愕かせた名前が、もう一つあった。予州刺史が、荀爽(じゅんそう)、孔融(こうゆう)といった官僚たちを従えて、黄巾軍を撃破したとあったからだ。その刺史の名は、王允(おういん)といった。中国での王姓は、一番多いと言われる。だから、同姓同名は多いが、彼には気になる存在だった。

コメント0

「サテライト「三国志」群像」のバックナンバー

一覧

「「さあ、今度はどのような字を覚えたのかな?」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官