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「だが、儂には妻がいるのだぞ」

【31】第七章 劉虞2

2012年10月2日(火)

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【30】第七章 劉虞1から読む)

 「是非、お側においてくだされませ」

 「末永く、お慈(いつく)しみくださいまし」

 ある日、劉虞が査察から屋敷へ戻ると、門前で佇(たたず)む娘が、同時に似たような台詞(せりふ)を吐いた。彼女たちの周囲には、数名ずつのお付きと思しい女たちが、荷車数台を見守るように控えていた。

 「どうしたというのだ?」

 劉虞としては初めて見る娘たちに、新妻のごとき挨拶をされても面喰らうだけだ。

 「父から、お側でお役にたてと言われました」

 彼女たちは、異口同音にそう言った。どうやら、匈奴(きょうど)と鮮卑(せんぴ)の裨小王の娘たちらしい。荷車に積んであるのが、持参金もしくはそれに匹敵する嫁入り道具というわけだ。

 多分、どちらかが輿入(こしい)れの準備を始めたのを、どちらかが気づいて先を越す競争をしたのだろう。それがとうとう、一緒になってしまったのだ。しかし、肝腎の劉虞に、意向を訊く間もなく来てしまった。

 「困ったやつらだ。このような人身御供(ひとみごくう)を贈らずとも、儂は双方ともに心して付き合うからと、帰って御乃父(ごだいふ・父親のこと)に、そうお伝えなされ」

 劉虞が引導(いんどう)を渡すように言うと、娘たちはさめざめと泣きだした。

 「あたしたちは、いえ、あたしは、望んでまいりました」

 「あたしも同じでございます。それに、一族の裨小王である父のもとへ、嫁入り先で嫌われたとあらば、もう、奴婢として売り飛ばされるしか、生きる道は残っておりませぬ」

 この理屈も、二人とも一緒だった。遊牧民には、劉虞の知らない不文律があるのかもしれない。また、婚姻や性に関する風習なら、なおさら解りにくかろう。

 「とにかく、屋敷内へ入って身を休めよ。だが、儂には妻がいるのだぞ」

 彼の言葉に、二人とも笑って応える。

 「妃になろうなんて、大それたことは考えてはおりませぬ。妾で本望でございます」

 「わたくしも、おなじです」

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「「だが、儂には妻がいるのだぞ」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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