• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

オクスフォード校での失敗~いかさまが暴露される場面

ポーの「ウィリアム・ウィルソン」を読む(3-2)

2012年10月31日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 今回はオクスフォード校でのエピソードである。このエピソードではカード博打のいかさまが暴露される場合は有名であり、その後の主人公の反応も興味深い。いかさま賭博で主人公が勝利を収めようとする瞬間に、Xが生身で登場して、いかさまのすべての道具だてを暴いてゆくところが圧巻である。

 では、第三部の後半の有名な場面をお読みいただこう。

(これまでの物語は、こちらからお読みください)

******

オクスフォード校での失敗

 このような悪徳のための手段が与えられると、ぼくの放蕩の気質は数倍の激しさで暴発した。狂ったように歓楽に耽りながら、ふつうの人のもつ節度すら失ってしまっていた。しかしそうした放埒の生活の細部を語って時間を費やしても空しいことだから、ここではぼくの金遣いの荒さは、伝説のヘロデ王を上回るものだったとだけ語っておこう。ヨーロッパでもっとも放埒な学生が集まりこの大学には、すぐに学生の犯す悪徳の長いリストができていたが、ぼくの始めた新奇な愚行で、そのリストに長い追加項目が加えられたのである。

 大学でぼくは紳士らしさをまったく失ってしまい、プロの賭博師からきわめて卑劣なイカサマを学びとっていて、この卑しむべき術にすっかりと熟達して、心弱い学友たちをカモにして、すでに巨額なものとなっていたぼくの財産をさらに増やす手段にしていたのだが、これはなかなか信じてもらえないことかもしれない。しかし実際にそうだったのである。

 この犯行はすべての人間的な名誉心のある人の感情に反する法外なものだった。それがこの罪が犯されても、咎められなかったことの(唯一のではないとしても)大きな理由であるのはたしかだ。すでにとっくにぼくを見放していた悪友たちですら、オクスフォードでもっとも気高く、誰にも知られているあのウィリアム・ウィルソンが、あの陽気で、率直で、気前のよいぼくが、そのような悪行に手を染めていたなどとは、明白な証拠をつきつけられるまでは、まったく考えてもみなかったことだろう。ぼくの追従者たちは、ぼくの愚行は若気のいたりであり、空想心が猛っただけのことであると弁護した。ぼくの過ちは類例のない気紛れのためであり、最悪の悪徳ですら、不注意で向こう見ずな放埒さのためだと弁護してくれたのだった。

 ぼくはこんな風で二年間ほどはうまくやっていたが、その頃、グレンディニングという名前の若い成り上がりの貴族が大学に入ってきた。ギリシアの有名な金持ちのヘロデース・アッティクスのように裕福で、しかもこの富は何の苦労もなしに一攫千金で掴んだ財産だという噂だった。おつむが弱いことはすぐに分かり、もちろんぼくのイサカマ賭博の絶好のカモにしたのだった。

コメント0

「ウェブ読書会」のバックナンバー

一覧

「オクスフォード校での失敗~いかさまが暴露される場面」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長