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「我輩をば、政に参画させて下され」

【82】第十七章 華佗5

2012年12月14日(金)

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【81】第十七章 華佗4から読む)

 十数年ぶりに帰った我が家は、すっかり荒れていた。破れた戸や窓から風雨が入って、家屋の中にも雑草が生えていた。だが、他人が侵入して家財を物色した形跡はない。

 「呉普(ごしん)か樊阿(はんあ)がここへ来て、麻沸散(まふつさん)の製法を盗んだのかと思ったが、やはりあれは」

 華佗がそう思ったとき、住居の扉が静かに開いた。一瞬盗賊かと思ったが、鎧の着こなしから、曹操の正規兵だと判る。

 「華佗先生でしょうか? 主人、曹操の使いで参りました。是非、御同道願いたい」

 「厭だと言っても、連れて行こう」

 華佗は、諦めて彼らに付いてギョウ(業/大里)へ行く。途中、曹操から咎めを受けそうに思った。それは、張繍から聞いたであろう呂伯奢の処置についてもさることながら、やはり劉表の生肝(いきぎも)の一件だ。

 生肝とは、正に生きている少年から取り出した肝臓のことである。痛がらせずに取り出すには、麻酔が必要だ。劉表に渡した麻沸散は方士へ渡され、それを彼らか海賊どもが、誘拐した少年に使ったのだ。

 このような迷信は、三国時代に始まったことではない。中国の薬研究の究極とは、不老長寿を手に入れることである。

 その過程で、少年の生肝が効くという迷信が、春秋時代から新興宗教を通じて拡まった。華佗は迂闊にも、それに加担したことになる。

 「お久しぶりでございます」

 「おお、曹家の悪童か。随分と偉くなったものだな?」

 三十数年の時間が、ここでは急速に縮まりつつあった。曹操が、無理やり連れてきたことを詫びると、華佗はそれが権力者の本質だと、平気で毒舌を吐いた。

 「儂の治療をしてくれぬか?」

 曹操が華佗を呼んだのは、それが目的だったようだ。ここで華佗は、内心ほっとした。

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「「我輩をば、政に参画させて下され」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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