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「皆、おまえを差し出せと言っておる」

【87】第十八章 橋姉妹5

2012年12月21日(金)

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【86】第十八章 橋姉妹4から読む)

 「曹操が、河北をほぼ統一しました。この次には、きっと荊州(けいしゅう・河南省、湖北省、湖南省)を狙いましょう」

 彼が州都の襄陽を落とせば、必ず長江に至る。そうなると、長江上流を抑えたい呉軍とぶつかることは目に見えている。

 夫人たちの会合では、さすがに不安がる女たちが増えた。いや、これは男どもの政や軍議ででも同じ事に違いなかった。

 「曹操の兵力とは、いかほどのものなのでしょう?」

 夫の周瑜が、外での話を閨(ねや)へ持ち込まないのは判っていた。だが、小橋は不安のあまり、つい訊いてしまったのだ。

 「世間へは、70万とか吹聴しておるが、それは家族や知人をも含めての、大袈裟で出鱈目な数字だ」

 すると珍しく、周瑜が軍事関係の話を初めてした。そして小橋は、夫が言わんとしたことを理解した。

 かつて、曹操が青州黄巾賊を30万を吸収したことがあったが、それも女や子供など家族をも含めた数字だと聞いた。それと同じ言い方であれば、実際の兵力は3分の1程度と概算できる。

 それでも、20万以上の計算である。それに比して、呉の兵力はいかほどなのか、小橋は核心を訊けなかった。

 「こちらは、精々5万が関の山だ」

 また、周瑜が軍事関係の機密を漏らした。いや、言ったことが真実かどうか、決して定かではない。彼女はただ、夫の顔をじっと見つめていた。

 「今、嘘を言っても始まらぬ」

 でも、なぜ今夜に限って、周瑜は外での話を家で喋ったのだろう。普通社会へ出た男というものは、外の話を家ではしたがらない。いや、黙っているのが、大方は美徳とされたのだ。だから、かつて孫策が大橋に喋ったのは、大橋から女たちの社会に、話が浸透することを狙ったのだろうか? そして、孫策も大橋もいなくなった今、周瑜と小橋がその代わりを仰せつかるのか?

 いや、その役割は呉娃が、大橋から託されたわけでもないが、充分に担っている。

 それなら、周瑜の態度が豹変したのは、どういう風の吹き回しだろう。

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「「皆、おまえを差し出せと言っておる」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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