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「俺は、宮女というものと付き合いたかった」

【99】第二十一章 蔡エン3

2013年1月17日(木)

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【98】第二十一章 蔡エン2から読む)

 「我らの力が及ばず、申し訳ないことをしてしもうた。許してくだされ」

 これだけ見ても、彼らが蔡ヨウ(巛-邑)を、学者として崇めていたと判った。彼女は、それだけでも本望だった。

 「朕も同じ思いである。蔡左中郎将の娘御、望みがあれば申されよ。できうることなら、聞いてつかわそう」

 皇帝協の言葉に、彼女は即座に応える。

 「父の、やり残した仕事を、是非わたくしにさせてくださいまし」

 彼女の言葉に、宮廷人はざわめいた。それは感嘆もあるが、嫁ぎ先や夫をどうするのかなど、さまざまな感慨が綯い交ぜになったものである。

 皇帝協が事情を問うと、彼女はありのままに応えた。夫の急逝を告げると、更に同情が集まった。

 「ならば、身辺を整理して後、宮中で父上の後を嗣いでみよ」

 当時、長安を仕切っていたのは、李カク(確の石が人偏)ら、董卓の涼州組と言われる部将であった。だが、『漢史』の編纂など、彼らの興味の埒(らち)外である。

 皇帝協からの勅許が出て、蔡エン(王/炎)は半年後から出仕した。かつて父蔡ヨウが使っていた机を宛がわれて、彼女は『漢史』の制作準備にかかった。とは言っても、初めは蔡ヨウが整理していた文書を見つけ出すことから始めねばならなかった。

 「父が使っていた文庫(書物や古文書などを入れておく倉庫。ここでは、個人ロッカーのような物)は、いずこにございましょう?」

 蔡エンはあまり気にしてなかったが、彼女が作業する場所は、男子の文官が多い。そこへ文の達つ女性、しかも未亡人という立場の者が入ってくると、男社会の常で、軽い警戒と嫌悪が混じる微妙な空気が流れる。

 不断、男同士でしていた野卑な話も避けねばならず、男のように気軽に話しかけることもできない。中には、わざと気を惹(ひ)こうとする不心得者まで出て、男同士も牽制しあうようになる。

 蔡エンも、最初の歓迎とは裏腹の違和感を悟っていたが、父親が残した仕事を片づける方が大事だと、敢えて総てを心で凍結させた。

 一方、彼女の意思ではどうにもならない事態に包まれる。それは、李カクと郭シ(三水/巳)の対立である。彼らは互いに、皇帝協をいかに利用するかで、ついには干戈を交えるまでになっていった。

 それを張済が仲裁して、皇帝協が長安を離れる運びとなった。

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「「俺は、宮女というものと付き合いたかった」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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