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「伏皇后が一族もろとも処刑されました」

【118】第二十五章 甄后3

2013年2月14日(木)

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【117】第二十五章 甄后2から読む)

 曹操が、自作の『苦寒行』を朗詠すると、割れんばかりの拍手喝采となった。

 「この詩歌の意味は解るか?」

 曹丕が口角を上げて、ちょっと意地悪く訊いた。幼少の頃から、兄顔負けの勉学熱旺盛だった甄妃に、理解できぬことはない。

 「羊腸坂が出てくるからには、河北のようすでございましょう。随分武張った詩ですこと」

 要は袁家を滅ぼした戦役を歌っているのだが、曹操としてもそれなりの苦労をしたということである。甄妃にとっては、思い出したくない記憶のはずだが、彼女は不思議なほど冷静だった。

 それは、袁熙との生活に、甘味な時間をほとんど待たなかったからだろう。子供がなかったのが、何よりの証左である。

 彼女が曹丕から目を離したとき、曹操が演壇に立っていた。

 「皆も承知しておろうが、寡人には3人の娘がいる。これなる蔡エン(王/炎)に、文の素養から行儀作法に至るまで教えを乞うたので、ようやく娘らしい仕草ができるようになった」

 曹操は、満座の中でそう言った。そして、次なる言葉で、宴に招かれた人々がざわめくことになる。

 「寡人は近々娘たちを、主上のお側で役立ててもらおうと思うておる」

 これは、奉公に出すのとは違う。後宮へ入内(じゅだい)させ、姫妾として皇帝協の周囲に侍(はべ)らせると言う意味である。平たく言えば、いつでも皇帝の胤(たね)を孕(はら)む状況を、積極的に設えることだ。

 伏皇后には子があるが、まだ皇太子冊立ななされていない。これを考え合わせると、3人の内の一人が公子(男児)を産めば、皇太子になる確立が高い。そうなれば、曹操は外祖父となって、ますます体勢が磐石になる。

 ざわめきはやがて納得の感嘆に変わり、全員が曹操を再度畏敬の念で眺めるような光景となっていた。

 甄妃は、先の曹丕が言った皇帝協に対する台詞を、素早く脳裏に甦らせた。

 「ああ、許都で幽閉同然にして、父上は都合の良いときだけお使いになるつもりだ」

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「「伏皇后が一族もろとも処刑されました」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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