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「阿斗様をお返しなされ。それにて、皆様を放免いたします」

【134】第二十八章 孫尚香5

2013年3月8日(金)

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【133】第二十八章 孫尚香4から読む)

 「お寂しくは、ございませぬか?」

 「はあ……?」

 呉からの使いが江陵へ来て、そのように挨拶したとき、孫尚香は何のことかと思った。

 「お優しい劉将軍(備)が益州(蜀)へ行かれて、もう1年近くになりましょう」

 孫権の使いは、劉備との夫婦生活がなくなったことを心配しているらしい。しかし、異母兄が彼女の心情を知らぬはずはないから、これは使いが勝手に取って付けた口上だ。

 それにしても、優しい劉将軍とは笑止である。確かに彼は30歳近く年長で、父親(孫策)の顔も知らず育った孫尚香にとっては、父性を感じさせる気の置けない存在となる。

 だが、実際彼女は夫とした男に、心など許してはいない。使いはそのようなことを、露ほどもしらない。だが、それは、大いに良いことだった。

 「ところで、異母兄上からの言伝は?」

 「はい、『達者で暮らせ』と」

 それならば、まだ実行する時期ではないということだ。孫尚香は、使いを犒(ねぎら)って帰らせた。

 それから1年経た建安19年(214年)、劉備は彼女たちを成都へ呼び寄せた。益州(蜀)を制圧したからだ。

 「お母様、遊びましょう」

 8歳にもなるというのに阿斗は幼い。いつも、甘えた声を出してやってくる。その日は竹筒(ささえ・竹製の水筒)を持っていた。

 「喉が乾くのね」

 孫尚香が優しく言うと、阿斗はにっと笑った。その笑った息が軽く彼女にかかり、その臭いに母親役があっと思った。

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「「阿斗様をお返しなされ。それにて、皆様を放免いたします」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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