• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「まだ水難が残っていたのか」

【149】第三十二章 鍾ヨウ1

2013年4月1日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

【148】第三十一章 馬謖5から読む)

 「まさか、こうも早く当たるとは……」

 川からずぶ濡れで上がってきた鍾ヨウ(瑤の旁/系・以下同じ)が冗談を飛ばす。それを見て、族父(おじ・一族で一世代年長者)の鍾瑜(しょうゆ)は焚き火を始めた。

 「まあ、身体を暖めて着物を乾かせ」

 このとき鍾ヨウは、少年ながらも族父のようすが少し変わったと思った。

 「はい、風邪を引かぬようにせねば」

 「そうじゃ。大事な身体になるでな」

 この言葉で、更に確信が持てた。彼は先ほどの占師の言葉を信じているのだ。鍾ヨウの人相を観たその男は、『この少年には出世の相がある。だが、水難の相もあるから気をつけなされ』と、鑑定したのだ。

 「当たるも当たらぬも、占いの確率は精々三分の一以下と考えれば良いのだ」

 族父は占師から離れると、そう嘯(うそぶ)いた。つまり、当てにはならぬ意になる。少年鍾ヨウも、同じ思いでいた。

 彼らは騎馬で、洛陽へ行く途中だった。鍾ヨウを、儒学の塾へ入れるためである。

 ところが、町はずれの川を渡るため橋に差しかかると、丁度家鴨の群れと擦れ違った。それに野良猫が襲いかかったため、恐慌に陥った家鴨どもが数百羽、一斉に翼を広げて逃げ惑った。

 すると、それに驚いた馬が棒立ちになり、弾みで鍾ヨウは欄干越しに川へ落ちたのだった。流れは激しくなかったので、彼は落ち着いて泳ぎ、なんとか命は取り留めた。

 それが、冒頭の場面である。だから鍾ヨウは、自分の無様な姿の照れ隠しに、占いが当たったと言ったのだ。

 だが、族父は、占師の言う水難が、早速現れたとしたのである。いや、それを三割以下だと言った占いの、信用できる部分の具現と見たのだ。

コメント0

「サテライト「三国志」群像」のバックナンバー

一覧

「「まだ水難が残っていたのか」」の著者

塚本 青史

塚本 青史(つかもと・せいし)

作家

1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務。イラストレーターとしても活躍。日本作家クラブ理事。父、塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人。近著に『李世民』。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

意外なことに、伝統的な観光地が 訪日客の誘致に失敗するケースも 少なからず存在する。

高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員