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震災再生の本がなぜ『ダンゴウオ』になるのか

『ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生』/

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2013年4月24日(水)

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【私が編集した本読んで下さい!】

ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生』鍵井靖章著
担当:新潮社出版企画部 企画編集部 金川 功

 この本に『ダンゴウオ』というタイトルをつけるのには、ちょっと勇気がいりました。サブタイトルにある『海の底から見た震災と再生』こそが、当初からのテーマであり、実際、ダンゴウオが写っているカットは、全体の1割くらいしかないのです。それでも、通して見て、読んでいただけたら、なぜこの本のタイトルが『ダンゴウオ』なのか、きっとご理解いただけると思います。

 東日本大震災直後の2011年4月の初め、ちょうど米軍と自衛隊によって海中に流された遺体の一斉捜索がなされた翌日に、鍵井さんは三陸の海に潜ります。きっかけは「週刊現代」編集部の依頼で、海中に流された“人の生活の痕跡”を撮影することでしたが、彼の中にはもう一つの“裏テーマ”があって、「震災をたくましく生き抜いた生物たちの姿をとらえたい」と考えていたといいます。この最初の潜水の際、魚の姿がまったく絶えた海で、奇跡的に1匹のダンゴウオに出会ったことが、物語の始まりです。

 以来、放射能汚染を恐れて、途中にブランクはあったものの、2012年12月まで、計100回以上に及ぶ潜水によって記録された海中を定点観測した写真で構成しています。写真集というよりは、その折々の状況や、彼の心の動きを原稿にして添えた、ドキュメンタリーという色合いが濃い本に仕立ててみました。

 震災から1年余りたった5月、鍵井さんの取材に同行して宮古湾を訪れた時のこと。夜、1日に何度も潜水してくたくたになっている鍵井さんをホテルの部屋に呼んで、話を聞きました。私がいちばん注目したのは、今回の一連の取材で彼が撮影した写真が、明らかに今までと違っていたことです。

いのちを撮りたい

 鍵井さんのファンの方ならよくご存知の通り、彼が得意とするのは、マンタやジンベエザメが悠々と泳ぐダイナミックな大洋の世界であったり、珊瑚礁に戯れる色鮮やかな南洋の魚たちを幻想的に捕らえた写真でした。それが、もちろん被写体が津波後の海の暗い世界であったから、当然といえば当然なのですが、それだけではない、カメラを構える視点、あるいは心構えのようなものが変わったと感じていました。

 順を追って話を聞くと、最初に潜ったときの気持ちは先述したとおりだったのですが、撮影を続けるうちに、少しずつ、やはり考えが変わってきたのだと、彼は語りました。

「正直に言って、僕は今まで海の生き物を撮っていても、産卵や孵化みたいな、生態にはほとんど興味がなかった。そんな地味な仕事は、誰か他の人に任せておけばいいと思っていました」

 そんな彼を変えたのは、モノトーンだった海が、次第に色を取り戻していく過程で出会った、生き物たちの小さな「生の営み」だったのでしょう。

 2011年11月、震災や津波があっても、宮古の川を忘れずに帰って来た鮭を撮影した彼は、翌12月、久しぶりに宮古湾に潜ります。この時撮影した写真の中に、たくさんの瓦礫のカットの中に混じって、卵を守るアイナメの姿がありました。さらに翌年1月には、ピンク色の卵塊を守るアイカジカの父親の姿が捉えられていました。もっと象徴的だったのは、ワカメの発芽の写真。沈んで転がっている車のアルミホイールに着生して芽を出したカットです。それまで、彼の写真の中では背景でしかなかった小さな海藻が、堂々と主役になっていました。

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