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エラスムスの旅立ち

ホフマン「大晦日の夜の冒険」を読む(7)

2013年4月2日(火)

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旅の途中での二つの契約

 アンデルセンの『影』の最後を検討しておこう。二人は旅にでた。学者は影に旅費をもってもらって、今度はかつてと逆の立場に立ち、逆の役割をはたす。影は「旅費はわたしが払いますから、あなたは道中の様子などを話して、わたしを楽しませてくればいいんです」[1]。この契約では、影が主人であり、学者は影の欲望を満たす手段となることを引き受けるのである。

 旅の途中で学者と影は新たな契約を結ぶ。学者は影と親しくなったのだから、「君・ぼく」の間柄になろうと提案する。しかし影は、学者に「君」と呼ばれると、「おい、お前」と命じられて、向かいの家を探りに出された本物の影だった頃を思いだすらしく、「地面に押しつけられるような感じになります」[2]と異議を唱える。そして逆に提案する。「あなたがわたしに向かって、君と言うことは許せませんが、かわりにわたしがあなたを君と呼ぶことにしましょう。そうすれば、目的が半分達せられることになります[3]と。

 学者は「ばかげた話しだ。あいつに君って言われるのに、こっちはあなたって言わなくちゃならないなんて!」[4]と屈辱を感じるが、「今は、がまんをしていなくてはなりません」[5]。このようにしてこの第四の契約において学者は、影に旅費を払ってもらうことの代償として、自分が影の影であることを、影の命令を受ける身分であることを、相手に語りかける言葉遣いのうちで、再確認させられるのである。

影の言い訳

 二人は保養地に到着する。そこには「ものが見えすぎるという病気にかかって」いる王女が滞在していた。王女はすぐに、影に影がないことに気づく。そして影にその理由を尋ねる。影は自分は普通の人とは違って、自分の影に人間の格好をさせているのだと誇らしげに説明する。「わたしは、自分の影に人間のように装わせているのです。しかもおまけに影までつけさせているという次第」[6]

 この説明で王女はすっかり納得してしまう。それに王女はポエジーさんのいた国、影が探索にいった国の王女であり、影はこの国は闇に紛れて探検してすべての秘密を知っているために、王女の知りたいことを何でも語って聞かせることができる。そこで王女は影がすっかり気にいってしまう。

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「エラスムスの旅立ち」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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