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アンドロイド創造の動機

アンドロイド/サイボーグ考(8)~リラダン『未来のエヴァ』を読む(3)

2013年7月16日(火)

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悪女論

 エディソンの考える悪女は、動物性の現れであると同時に、ある人工性を駆使することによって生まれるとされている。まだ恋を知らず、男性の前で「薔薇のような色で頬を染めてしまうような乙女」であれば、いかなる人工的に装飾ももたずに男性を魅惑するだろう、そしてその魅力には、動物的なものを含まないだろうと彼は考える。この悪女は、ピュグマリオン幻想における乙女と正反対の像なのである。しばらく彼の言葉に耳を傾けてみよう。

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 こうした女性の容姿の可愛らしさは、ほとんどあらゆる場合に、人工的な性質のものであり、しかもきわめつきの人工的な性質のものなのです。たしかにそれを一目で見抜くことは困難かもしれません。しかしそれは確実なことなのです。

 議論の好きな哲学者たちであれば、「全体としてそうした女性が気持ちのよい印象を与えるのであれば、何も問題はないじゃないか」と叫ぶかもしれません。「ああいう女性はわたしたちにとっては、結局は過ぎ行く楽しい刹那を提供してくれるだけの存在ではないかね」とか、「たとえ彼女たちの人柄が、さまざまな新しい化粧品や装身具を薬味のように効かせることで、初めて魅力のあるものになるだとしても、それがわたしたちに気にいるということが大切なのだ。彼女たちが巧みに作りだしている優れた味わいが、どのような方法で調理されたものだしても、そのどこに問題があるのかね」とか、叫ぶかもしれません。

 しかしこの問題は、お気楽なアマチュアの哲学者たちが考えるよりも、はるかに深刻なものであることを、いずれ証明してみるつもりです。わたしたちがこうした怪しげな娘たちの、きわめて可愛い瞳をみつめてみるならば、こうした娘の内側に、淫乱な猫がひそんでいて見張っていることが、その輝きによって見分けることができるのです。この輝きが見分けられれば、まがいものの青春がこうした女性にもたらしている魅力の真の姿はすぐに暴露されるのです。

 罰当たりなことと言われるかもしれませんが、こうした女性の隣に、ごく普通の若い娘を座らせてみるとしましょう。まだ熟していない恋の聖なる言葉を初めてささやかれただけで、朝焼けの太陽に照らされた薔薇のような色で頬を染めてしまうような乙女を座らせてみるのです。そうすればあのような女たちに「可愛い」という形容詞を使うのはまったく間違いであることが一目で分かるはずです。このような女たちは、白粉や頬紅を塗り立て、あちこちの歯は義歯になっており、髪はさまざまな色で染めてあり、赤やブロンドや栗色の鬘をかぶっていたりします。彼女たちは作り笑いを浮かべ、まなざしは技巧的で、恋を語る言葉は偽りなのです。

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「アンドロイド創造の動機」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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