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アンドロイドの登場

アンドロイド/サイボーグ考(10)~リラダン『未来のエヴァ』を読む(5)

2013年7月30日(火)

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ハダリーの特徴

 ここで初めて登場したアンドロイドは、まだ未完成品である。この状態ではまだアンドロイドというよりも人型(ひとがた)の金属物質であるかのようである。それでも以下でお分かりのように、この人型にはすでに顕著な特質がある。

 第一にこの人型はまだ顔をもたない。黒いヴェールで顔の部分は覆われているのである。顔は、発注者の好みで決めることができるようになっているのだ。それがピュグマリオン幻想の創造物としての性格である。

 第二にこの人型は金属でできていて、人間の肌をもたない。しかし奇妙なことに、この甲冑の身体はうら若い乙女のように振る舞う。しぐさからは、この人型が淑やかな女性であることが匂い立つように明かされるのである。

 第三に、この人型は言葉を話すことができる。それもごくふつうの女性と同じように自然に言葉を選んでいるようである。エワルドの反応からも明らかにように、機械と話しているという印象を与えることはなく、ふつうの人間と話しているような感じを与えるらしい。エディソンが後に説明するように、この人型が話す言葉は、録音された言葉である。しかしそれが自然に聞こえるのは不思議である。この背後には別の秘密が隠されているようである。

 このようにハダリーはまだ未完成品であり、これから生き始めようとするアンドロイドである。しかしエワルドはすでにこの機械に魅惑され始めているようである。読者であるぼくたちもまた、人間であるようでありながら人間でない存在に、機械でありながら、機械でない存在に、不思議な魅力を感じる。

 ここでうら若くて美しい人間の女性が登場したとしても、物語としては特別なおもしろさはないだろう。生命がなく、言葉を話すことのないものと考えられる機械が、乙女のしぐさをしながら、人間と自然に対話する。そのような異様な状況が、ぼくたちの興味をかき立てる。さて、登場したアンドロイド、ハダリーの振る舞いを読んでみよう。

******

 その神秘的な存在は、しばらくそこでじっと立ったままでいたが、やがて一段低い閾をまたいで、心をときめかせるような美しさに包まれたまま、彼女を眺めている二人の男性のほうに向かって進んできた。

 その歩みは軽やかにみえたが、甲冑の身体をまぶしく照らしだす照明の下で、カツカツと金属らしい足音が響いた。

 エディソンとエワルド卿から三歩ほど離れたところで、この幻のような存在は歩みをとめた。それから深みのある甘やかな声で、こう告げた。
「エディソンさま、お呼びですか」

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「アンドロイドの登場」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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