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生命のある機械

アンドロイド/サイボーグ考(11)~リラダン『未来のエヴァ』を読む(6)

2013年8月6日(火)

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アンドロイドの概念

 さて前回は、エディソンがあの金属物体を「生きている人間ではない」と断言したところまでお読みいただいた。その言葉にエワルド卿は驚愕を示す。もちろん金属物体の外見をしているので、ふつうの人間ではないことはすぐに理解できる。しかし金属の物体が人間と同じように振る舞い、話すのだと考えるよりも、金属物体の中に人間がいて、人間と同じように振る舞い、話すのだと考えるほうが、すなわち人間が金属の甲冑を着ていると考えるほうが自然だろう。昔の鉄仮面のように、何らかの理由から、顔を隠し、甲冑を着用していると考えるのが、自然なのである。

 今回の場面では、エディソンがあの物体が人間では「ない」ことをエワルド卿に教えるために、この連載の第一回目で紹介した人造の女性の片手をエワルドに示して、人造人間アンドロイドの概念を提示することになる。

******

 エディソンがあの物体が「生きているものではない」という秘密を明かすと、エワルド卿はこの恐るべき物理学者の目をじっと覗きこんだ。何か聞きまちがいをしたのではないかと戸惑うふうであった。
 エディソンは「はっきり申しますと、あのように歩き、話し、答え、わたしたちの命じたことに従うあの金属体には、まだ人格はないのです」と断言した。

 エワルド卿は沈黙したまま、エディソンを見つめつづけた。エディソンはこう言い直した。
 「人格はないのです。ミス・ハダリーは外から眺めると、まだ電磁気的なものにすぎないのです。まだ冥府に属する存在であり、一つの可能性でしかありません。お望みであれば、魔法のような性質の秘密をお見せしましょう。しかしわたしがお話した言葉の意味をもっと手っ取り早く理解していただけるものが、こちらにあるのです」と、エディソンは身振りでエワルド卿を導きながら語った。

 そしてエワルドを導きながら迷路のような部屋を横切って、黒檀の机のところへ連れていった。エワルド卿が訪問する前に、月の光を浴びていたことをご紹介した机である。
 そしてエディソンは、薄紫の絹の布でできたクッションの上に置かれていた例の青白く、血塗れの女性の片腕を指差しながら、「これをご覧になると、どんな印象をうけられますか」と尋ねた。

 エワルド卿は、今、眩いばかりのランプに照らしだされているこの人間の片腕を眺めて、新たな驚愕の思いに襲われたのだった。
 「これはいったい何ですか」
 「よくご覧になってください」

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「生命のある機械」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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