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機械を愛することができるか

アンドロイド/サイボーグ考(13)~リラダン『未来のエヴァ』を読む(8)

2013年8月20日(火)

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愛の可能性

 このようにしてエディソンとエワルドの賭けが始まった。この賭けは、科学者であり技術者であるエディソンの能力にかかっているのであるが、エディソンは自信満々である。その実現可能性をまったく疑っていないのである。

 ところがこの賭けにはもう一つ別の賭けがある。エワルドもまたこの賭けの当事者なのである。この賭けは表面的には、アンドロイドの実現可能性だけにかかっているのであるが、この実現可能性はたんに技術的な性格のものであるだけではない。すでに指摘されたように、賭けられているのは「精神」なのである。アンドロイドは知性をもたねばならない。それだけではない。アンドロイドは、それを贈られたエワルドにとって、アリシアに代わる存在でなければならない。

 エディソンはエワルドに、アリシアの肉体をもつアンドロイドを提供することを約束しただけではなく、アリシアと比較にならないほどの高貴な魂をもつ存在を与えることを約束したのである。エワルドがアリシアの代わりに、そのアンドロイドを愛することができるためには、アンドロイドが高貴な魂をもっている必要があるからである。それでは人造の人形にすぎないものを、エワルドはアリシアに代えて、愛することができるだろうか。

 アンドロイドはエワルドにとって愛すべき存在になるだろうか。これは技術的な実現可能性とは別の重要な問題である。エワルドははたしてアンドロイドを愛するだろうか。エディソンはエワルドが愛することのできるアンドロイドを作りだすことができるだろうか。この問題をめぐって新たな対話が始まる。

******

肉体には肉体を

 エワルド卿はエディソンに尋ねた。「実際のところ、魔法使いさん、わたしはあのミス・ハダリーのいわば〈愛人〉になることができると考えておられるのですね」

 「もしもあなたがありきたりの男性であったなら、あなたが〈愛人〉になってしまうのではないかと、心配したところでしょう」とエディソンは答えた。「しかしあなたはさきほど、あの美しい生き物であるアリシアさんを所有したいという願望をすべて断ち切ったと、神かけて誓われましたよね。ですから、ハダリーが、ほんとうに愛されるにふさわしい愛し方をしていただきたいのです。そのほうが〈愛人〉になるよりもはるかに素晴らしいことですから」

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「機械を愛することができるか」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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