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エワルドの惑い

アンドロイド/サイボーグ考(20)~リラダン『未来のエヴァ』を読む(15)

2013年10月8日(火)

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 エワルド卿はアリシアの求めに応じて、夕暮れの庭園に散歩にでかける。エワルドがハダリーと出会う前の生身のアリシアとの最後の別れの儀式となるだろう。そこでエワルドの心は、目の前のアリシア・クラリーへの思いと、地下で眠っているはずのアリシア・ハダリーへの思いの間で引き裂かれる。ハダリーのところに心が飛ぶかと思うと、いつもと少し様子が違うアリシアに急に心を惹かれたりするのである。


******

アリシアの誘い

 それからアリシアは威厳を保ちたいとでもいうように、素っ気ない態度でエディソンにこう語った。その素っ気なさは、彼女のすさまじいまでの美しさにそぐわないものだった。「エワルド卿とわたしで、二人で庭を一回りしてきても構いませんでしょうか。あることについて、どうしても晴らしたい疑念が生まれたものですから」。

 少し困惑したエワルド卿はエディソンと目配せを交わしてから、「もちろんです」と答えた。「でもわたしも今晩は、エティソンさんとあなたについてお話しなければならないのです。それにお忙しい方ですしね」。
 ミス・アリシア・クラリーは「あら、そんなに時間はかかりませんわ。ただこの方の前では、お話しにくいことがありますのでね」と答えた。

アリシアとの散歩

 そしてミス・アリシアは愛する男の腕をとり、二人は庭に歩み行った。やがて二人は暗い並木道のほうに歩みを進めた。
 エワルド卿は、ハダリーのいるはずの魔法の地下室のことを考えると、待ちきれない思いだった。一時間後には、新しいエヴァと出会えるはずだったのだ。

 若い二人が庭に出て行ったころから、エディソンの顔に不安そうな表情が浮かんでいた。何か深く考えている様子だった。おそらく、ミス・アリシア・クラリーが愚かしい奇妙な考えに動かされて、何か秘密を漏らすのではないかと懸念していたのだろうか。彼はガラス窓のカーテンを素早くあけて、窓ガラス越しに、二人の後ろ姿を鋭いまなざしで追いかけていた。

 やがてエディソンはすばやい身振りで室内の小さなテーブルのところに戻った。そこには船で使う望遠鏡と、新式のマイク、そして電気の操縦機が置かれてあった。この操縦機につながれた電線は、壁を貫いて見えないように配置されており、彼方の並木道の樹木の梢のあたりで交差して、あちこちに分岐している他の電線のところまで、遠くまで伸びていた。

 おそらく別れ話のようなものが持ち上がるに違いないと予感していたのであり、ハダリーをエワルド卿に与える前に、それを聞いておきたかったのだろう。その会話がすぐにでも始まりそうだった。

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「エワルドの惑い」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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