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エワルドの抵抗

アンドロイド/サイボーグ考(23)~リラダン『未来のエヴァ』を読む(18)

2013年10月29日(火)

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 アンドロイドのアリシアは、エワルドに常識と理性を捨てて、生ける人形を愛することを学べと教え諭す。人間を捨てて人形を選びとるのはいかにも逆説的なことであるだけに、人形の口説きには力が入るのである。しかしエワルドはこの逆説に抵抗する。人形を愛するなんて、いかにも空しいものであることは、理性的に判断すれば当然のことだからだ。

 しかし作者はここで野次馬を登場させる。その理性的な判断というものこそが、空しいものであることもまた明らかだからである。人は人間ではなく人形を愛することができるほどに、倒錯した強い心をもつ存在でもある。それを最初に示したのが、若い女性たちには目もくれずに、石造の娘を創造し、その娘をひたすら愛したのだった。さて、エワルドは生けるアリシアを捨てて、命のない人形のハダリーを愛することができるようになるだろうか。

******

理性の推論の空しさ

 「ああ、あなたがもしも、わたしの未来の魂の夜がどれほどに甘やかなものであるか、あなたがこのわたしを、どれほど多くの夢の中でひそかに待ち望んでおられたか、ご存じでしたらよいのですが。どれほどの幻惑と憂愁と希望の富が、わたしの無人格の中に隠されているか、お分かりいただけたらよいのですが。

 あなたの精神の息吹が吹き込まれるだけで、生きた肉になるわたしの霊気に満ちた肉体、あらゆる調和がすでに囚われているわたしの声、失われることのないわたしの貞節、これらは、あなたにわたしが存在しないことを証明しようとする空しい推論と比較して、無価値なものなのでしょうか。

 あなたはまるで、推論の示す空しく、致命的な証明なるものを拒む自由がないと感じておられるようですね。しかしこの証明というものは、きわめて疑わしいものなのですよ。というのは、この推論で語られている「存在」というもの、これがどこから始まるのかを証明できる人は誰一人としていないからなのです。この「存在」というものの本質は何なのか、その概念は何なのか、それを示すことは誰にもできないことなのです。

人形の愛

 わたしが、裏切りをつづける生ける女性という種族に属さないものであることが、それほど残念なことなのでしょうか。愛を誓いながら、愛する人の死後も生きる可能性を、あらかじめ計算にいれている女性という種族に属さないものであることが……。わたしの愛は、天使たちの胸に脈打つ愛に似たものです。わたしの愛は、昔ながらの魔女のキルケが眠っているあの地上の愛と比べて、はるかに心を奪うことのできる魅力をそなえたものなのです」。

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「エワルドの抵抗」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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