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二つの悲劇

アンドロイド/サイボーグ考(26)~リラダン『未来のエヴァ』を読む(21)

2013年11月19日(火)

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 このようにしてハダリーは海を越えて旅立つ用意をするのだった。アンドロイドであるハダリーは、人々の注意を引かないように、棺の中に入ってロンドンまで送られることになる。しかしそこに大きな悲劇の原因が潜んでいたのだった。リラダンは、ハダリーが海を越えなければならないという設定にすることで、この物語を終結させるのである。

******

ハダリーの入棺

 アンドロイドは、全身を身震いさせたようだった。エディソンが首飾りの金具に手を触れたからである。
 彼女はエワルド卿に、「お手を貸してくださいませ」と頼んだ。
 ハダリーは彼の肩に寄り掛かりながら前に進んだ。そして憂愁をおびた身振りで、微笑しながら、美しい棺の中に入っていった。
 やがて波打つ長い頭髪を身体の周囲に整えて、静かに身を横たえた。

 次に自分の額を、白い帯状の織物で巻いた。頭を支えて、この臥し所の内側のどの部分も、自分の顔にじかに当たることがないようにするためだった。それから絹の長い帯を、身体の回りに巻いて、しっかりと固定した。棺にどんな衝撃が与えられても、身体が動かないようにしたのである。

 彼女は胸の上で両手を組んでから、「ねえ、あなた。海を渡ったら、眠っているわたしを起こしてくださいね。ふたたびお目にかかるまでは、夢の世界でお会いしましょうね」と語りかけた。
 そして彼女はもはや眠り込んだかのように、目を瞑った。

 二枚の扉が少しの音も立てずに、静かに彼女の上でぴたりと閉じられた。
 棺の上には、紋章を刻んだ一枚の銀のプレートが取り付けられていた。そのプレートには東洋風の字体で、ハダリーと刻んであった。

 「すでに申し上げましたように、このエジプト風の棺は、大きな四角い箱の中に収容されることになります。この箱には丸く膨らんだカバーが取り付けられて、その内部には凝縮した厚い詰め綿を詰めておきます。そうした用心をするものも、旅行中に通りすがりの人々の疑念をかき立てることのないようにするためです。さあ、棺の鍵をお渡ししましょう。この鍵を回すと、見えないところにある錠前のバネが緩んで、棺の扉が開くのです」とエディソンが説明した。

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「二つの悲劇」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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