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植物の意識と人間の無意識

アンドロイド/サイボーグ考(28)~バトラー『エレホン』を読む(2)

2013年12月3日(火)

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 バトラーは『エレホン』の「機械の書」において、人間の意識というものが、それほど人間に固有なものであるかどうか、もしかすると機械もひそかに意識をもっているのではないか、機械をたんなる機械として軽蔑していると、ひどい目にあうのではないかと、さまざまな模索をする。その第一の試みが、鶏という動物の産卵の行為を、機械のような器官の一連の働きのうちに含めようとする前回の試みだった。

 今回の連載で次に試みられるのは、ふつうは意識というものをもたないとされている植物にも、意識と同じようなプロセスが存在するのではいかということを、食虫植物を例に考察することである。動物行動学の分野では、ある年に害虫に激しく攻撃された樹木が、その翌年にはその害虫を近付けないような樹液を出すことが知られている。その反応はまるで樹木が、「今年はあいつのおかげでひどい目にあった。来年はあいつにやられないようにしよう」と考えているかのようである。植物にもある意味では意識のようなものがあるのではないかと考えても不思議はないのである。

 あるSF小説で、岩石のような無機物にいたるまで、すべてのものが「意識」をもっていると語っていたのが印象に残る。意識の働きがごく緩慢なので、人間には意識があるようには到底見えないというのだ。オーストラリアではカニやエビの料理の際に、苦しませると犯罪とみなされるという。熱湯にすぐに入れて安楽に殺さなければならないのである。踊り食いなど、もってのほかである。カニやエビが、あるいは本文のように牡蠣が「苦しい」と叫ばないから、意識はないと思ってはならないのである。高等動物である人間だけに意識があるというのは、思い上がりかもしれないのである。

******

植物の意識と無意識

 それから著者は意識の問題に戻り、ごく初期的な現われをみいだそうと努力して、次のように書いている。「[食虫植物のように]花という器官で有機物を食べる植物がある。蠅が花にとまると、花弁が蠅を覆うように閉じてしまい、植物がその身体に昆虫を完全に取り込んでしまうまで、ずっと蠅をつかまえているのである。

 そして花弁は、その植物の食べられるものが触らなければ、閉じることはないのである。一滴の雨が触れても、一本の枝が落ちてきても、しらん顔をしている。不思議なことではないだろうか。植物という意識をもたないものが、自分の利益にこれほどの注意を払っているとは! これが意識のないものだとしたら、意識など、何の役に立つというものだろうか。

 植物にはたしかに目も耳もないし、頭脳もない。だからと言って、植物は自分が何をしているかを〈知らない〉のだと言えるのだろうか。たしかに植物は機械的に、たんに機械的にふるまっているだけだと言うことはできるかもしれない。しかしそうであるならば、きわめて意図的な行為に見える他の多くの行為もまた、機械的なものだと言わざるをえないのではないだろうか。植物が蠅を機械的に殺し、機械的に食べているのだと言うことはできるが、それでは植物から見ると、人間は羊を機械的に殺し、機械的に食べているように思えるのではないだろうか。

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「植物の意識と人間の無意識」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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