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仮説学からみた機械の進化の危険性

アンドロイド/サイボーグ考(29)~バトラー『エレホン』を読む(3)

2013年12月10日(火)

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機械の進化の可能性と危険性

 このように著者は、機械が意識をもっている可能性を探求しながら、機械があたかも意識をもっているかのように見える現在までの進化の速さに注目する。機械が進化している重要な証拠として、著者は機械の小型化という現象を指摘する。かつては時計は、かさばってごつい柱時計のような大きさを必要としていた。しかし今では小さな懐中時計になっている。これは時計が退化したのではなく、進化したのである。

 動物の進化の歴史で、かつての巨大な恐竜が死滅して、それよりも進化した小さな脊椎動物だけが生き延びているのと同じである。かつての巨大なコンピュータの能力も、今では小さなパソコンの能力に及ばないのである。

 著者は、人間が猿から進化してくるまでにかかった数百万年の時間の長さと、機械が進化するために必要だった時間の短さを比較してみて、機械の進化の速さに驚く。人間が進化するとしても、この機械の進化にはとうてい太刀打ちできないだろう。人間には有機的な身体というハンディがあるからである。機械は無機的な身体をもつだけに、その進化の自由度は高いのである。

 そしてこのペースで機械の進化がつづくならば、いったいどのような世界が登場するだろうかと考えるのである。今でも人間が機械に隷属していることが多いのに、著しく進化が進んだ機械は、やがては人間の主人として登場するのではないだろうか。そしてすべての人間が奴隷として機械に隷属するようになるのではないだろうか。

仮説学

 ここで著者は、人間の進化の一例として、赤子が生まれながらに仮説語を話す可能性を指摘している。この仮説語は、このエレホンの国では重視されている仮説学の言語である。この学は、現在の状態を自明で当然のものと考えず、この現状のうちにまだ萌芽として存在しているだけで、まだ発見されていない可能的な存在について考察する学である。

 この国の住民は仮説学を学ぶことで、つねにこうした可能的な存在に留意し、それによって起こる可能性のあるあらゆる危険な事態に準備しているのである。ある年齢になった若者には、まったく不可能と思われる出来事を想像させ、それによって発生する問題について答える練習をさせる。そのために使われるのが仮説語であり、これを学ぶために人々は長い時間を掛ける。そしてこれに優れている人は優遇され、高い名誉を与えられるのである。

 教育組織としては、次の章で言及される「不条理大学」がある。この大学ではこの仮説学に依拠して、できる限り不条理なことを想像できる能力を養うのである。この「機械の書」と機械撲滅革命も、この仮説学の能力で、機械に訪れる進化を想像したことによって生まれたのである。著者は、この仮説学に依拠して、機械がこのまま進化した場合に発生することを洞察し、「わたしたちがまだ機械の進化を押しとどめることができるうちに、この進化を注意深く見守って、押しとどめるべきではないだろうか」と提案したのである。

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「仮説学からみた機械の進化の危険性」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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松﨑 曉 良品計画社長