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第20話「この株価は実力ではない」

2013年12月11日(水)

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パリ大学

 ミミはサンテミリオンのシャトーダニエルから持ち帰った資料を丹念に読み進めた。そして、ついに科学者としての直感が的外れでなかったことを確信した。ダニエルの研究は完成寸前だったのだ。

 いうまでもなく、植物が行う自然の光合成は、水と二酸化炭素を原料として、太陽光のエネルギーを使って酸素と水素に分解する。これと同じことを人工的に行おうとするのが人工光合成だ。植物と同様に、太陽光を使って水を水素と酸素に分解する。こうして作った水素を燃料電池に注入して、水と電気を発生させる。燃料電池車はこの電気でモーターを動かす。さらに、作りすぎた水素は二酸化炭素と反応させてメタンなどの有機物を作れば、長期間にわたり保存が可能になる。

 ダニエルが生涯をかけて研究したのは、太陽光エネルギーを使って、水を水素と酸素に分解する技術だった。彼の研究ノートには詳細な実験結果が記されていた。ダニエルは、スズなどの金属を中心とする金属錯体を使い、反応促進剤を添加して、可視光で水を分解する研究に取り組んでいた。だが、効果的な反応促進剤が見つからず、研究を半導体を触媒に使う方法に変え、何度も試行錯誤を繰り返した。だが、ついに実用化に耐える技術にはいたらず、研究を断念したのだった。サンテミリオンでのあの公開実験は、見果てぬ夢をあきらめきれない研究者ダニエルの茶番だったのだ。

 しかし、ミミはダニエルの研究が全くの失敗だとは思えなかった。むしろ、ちょっとしたボタンの掛け違いがダニエルを混乱させてしまったのではないか、と思えてならなかった。プロトタイプの完成は意外に近いのではないか。さらに、ダニエルが進めてきた金属錯体と半導体触媒の研究を組み合わせれば、より効率的に水素を取り出すことができるのではないか、との思いに至った。ミミは、パリ大学の仲間と共にダニエルの研究を引き継ぐことを決意した。

日豊自動車 社長室

 「時間がない!」

 不本意にも燃料電池車を2015年にリリースすると公表してしまった湯浅は頭を抱えた。それまで日豊自動車は2018年をメドに、次世代自動車の開発を続けていた。

 だが、達也が取締役会を欠席した日、三浦専務の緊急動議を受けて、あれよあれよというまに2015年リリースが決まったのだ。損益計画、投資計画、人員計画が大きく変わってしまったのは言うまでもない。

 あのプレス発表を境に、それまで研究所に来たことがなかった三浦専務は頻繁に顔を出すようになった。そして、こう叫ぶのだった。

 「社長に恥をかかせるな」

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「第20話「この株価は実力ではない」」の著者

林 總

林 總(はやし・あつむ)

公認会計士

外資系会計事務所、監査法人勤務を経て開業。国内外でビジネスコンサル、管理会計システム導入コンサルのほか、大学で実践管理会計の講義を行っている。また管理会計の草の根活動として、団達也会を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官