• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

機械の戦略と反乱

アンドロイド/サイボーグ考(31)~バトラー『エレホン』を読む(5)

2013年12月24日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 著者は、人間の世界がいかに機械に依存しているかを描きだしながら、機械が人間を自分の進化のための手段として使っていることを指摘している。たしかに近代の機械文明の始まりとともに、人間は機械を濫用してきた。そしてその裏返しとして、人間は機械に奉仕するような存在になってきた。

 マルクスは『資本論』において、近代の工業時代の登場とともに、人間が機械の一部となって、「部分機械の自己意識をもつ部品」となって機械に隷属するようになっていることを次のように描いていた。「資本制的な形態の大工業は、かつての分業をさらに怪物的な形で再現する。すなわちほんらいの工場では、労働者は部分機械の自己意識をもつ部品に変わってしまうのである。それはあらゆる場所で、機械と機械労働が散発的に利用されるからであり、また分業の新たな基盤として、女性労働、児童労働、非熟練労働が導入されるからである。

 このようにしてマニュファクチュア的な分業と大工業の本質との矛盾が暴力的な形であらわになる。というのも、近代的な工場とマニュファクチュアに雇用されている児童の多くは、幼い頃からごく単純な操作だけをするように定められているので、長いあいだ搾取されていても、そのマニュファクチュアや工場で役立つようないかなる種類の労働を学ぶこともできない」(マルクス『資本論』第三分冊、日経BP社、二七五ページ)

 こうして大工業では人間は機械の部品のような存在になり、一生を機械の部分装置として生きるようになる。これはチャップリンの『モダンタイムズ』における人間の歯車化をまざまざと思い浮かばせる描写である。エレホンではこの機械文明の帰結を避けるために、機械を撲滅するという革命的なアイデアを提起したのだった。そしてラッダイト運動のような単発的な機械破壊運動ではなく、野蛮から文明にいたる端緒となった道具類だけは維持しながら、近代的な機械を破壊するとで、原始時代に近い人間の生を取り戻そうとしたのだった。


******

機械の進歩と人間の役割

 たしかに低俗な唯物論的な考え方によれば、機械を利用することで恩恵がえられるかぎり、機械を利用する人々がもっとも繁栄すると言えるだろう。しかしこれは機械の策略なのだ。機械は人間を支配するために、人間に奉仕しているのである。人間がある世代の機械をすべて破壊したとしても、よりよい世代の機械を作りだしてくれるならば、機械は人間にたいして悪意を抱くことはない。逆に、人間がある世代の機械を破壊して機械の発達を促進してくれたことで、人間に寛大に報いることだろう。

 機械たちが人間を憎むのは、人間が機械を無視したり、劣った機械を使ったり、新しい世代の機械を製造するために十分な努力をしなかったり、新しい機械を創造することなしに、古い機械を破壊したりした場合である。そしてこれこそまさに、われわれがなすべきこと、しかも迅速になすべきことなのである。人間がまだ幼い機械の権力にたいして叛乱を起こして、それが機械に無限の苦しみを与えるとしても、人間の叛乱が遅れたならば、いったいどういう事態になるだろうか。

コメント0

「ウェブ読書会」のバックナンバー

一覧

「機械の戦略と反乱」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

意外なことに、伝統的な観光地が 訪日客の誘致に失敗するケースも 少なからず存在する。

高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員