『2014年版間違いだらけのクルマ選び』徳大寺有恒+島下泰久著、草思社
まさか今も「クルマなんてどれも同じ」とお考えですか?
「クルマなんて、どれも同じでしょ」と言う人、今もいるのでしょうか。
2000年ころは、私が『間違いだらけのクルマ選び』の編集をやっているという話を友達にすると、よくそんなことを言われたものでした。そのたびごとに、「そんなことはない!」と力説したものでしたが。
でも、クルマ好きでない人から見れば、10年前のクルマはスペックはどれも似たようなものにしか見えなかったかも知れません。普通のクルマは前輪駆動で直列4気筒ガソリンエンジン、4速オートマチックというのが一般的でどれを選んでも同じよう。その他の違いはミニバンかセダンかワゴンか、というもの。
当時、クルマ技術は成熟して一つの最適解にたどり着きつつあるように見えました。あとはマーケティングと、細部を洗練させる仕事が残るだけなのではないか…、そう思えて暗い気持ちになったこともありました。
ところがどうでしょう。それから月日を経て、現在のクルマは驚くほど多様化しています。はっきり言いましょう。今、クルマは、1970年代や80年代に引けをとらないくらい、「面白い時代」に突入しつつあるのです。
『間違いだらけのクルマ選び』がはじまったころ
『間違いだらけのクルマ選び』は1976年に最初の本が出て以来、38年にわたる歴史を持つシリーズ書籍です。2004年まで徳大寺有恒さんによる年度版著作として刊行を続けてきましたが、いったん休刊。その後2011年からは島下泰久さんを共著者に迎え、また年度版として毎年12月に刊行しています。国産車のほとんどと最新の外国車、あわせて100ほどの車種の批評と、その年のクルマ界の出来事に関する論評や提案の文章によって構成されます。バイヤーズガイドであり、クルマ社会の批評・ジャーナリズムの本でもあります。
『間違いだらけ』がはじまった76年ころ、クルマは間違いなく面白かったと言えます。
無理をして首都高を作ってしまい、その先見性の無い道路計画のために、どれほど関東圏の道路交通網が経済的損失を強いられることになったのか。そしてその負の遺産を抱えたままさらに中央環状、圏央道と放射+同心円の東京自己中心的道路網を作り続けている行政の悪弊を客観評価する冷静な分析ものが読みたいと願っています。(2014/01/08)