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機械と人間の類似性

アンドロイド/サイボーグ考(34)~バトラー『エレホン』を読む(8)

2014年1月21日(火)

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 ここで著者は、人間の意志の自由を否定しながら、未来は確定されたものであるという主張を展開します。その場合には人間の行動は機械論的に決定されていることになるでしょう。人間は自由な存在ではなく、必然的な法則にしたがって行動することになるでしょう。

 これはある視点から見た場合には、正しいのです。自然法則が支配する世界において行動する人間は、こうした自然の必然性から逃れることはできないからです。その必然性の支配のもとにある人間には、意志の自由は与えられていないと思えるでしょう。カントはこのジレンマに対処するために、人間は叡智的な世界の存在者としては自由ですが、自然の必然性の法則のもとに生きる現象的な存在者としては、自由な存在ではないと考えました。

 著者は人間を、カント的な意味で現象的な存在者とみなし、そこから人間と機械の存在様態との類似性を引き出すのです。どのみち人間とても、自分で思うほどに自由ではなく、他者の命令やら自分の欲求やらに左右されているからです。

******

未来の予見可能性

 未来は現在によって決まり、現在は過去によって決まるのであるから(人間の生活というものは、小さな妥協によって埋まっているのであり、現在が存在するのも、こうした妥協の一つにすぎない)、過去というものは変えることのできないものである。人間は未来を過去のようにはっきりと見ることはできないが、それはわれわれが実際の過去と実際の現在について知ることがあまりに少ないからにすぎない。実際の過去や現在はわれわれには知るには大きすぎるものである。

 もしもわれわれがこれらを知ることができたならば、未来というものはその微細な細部にいたるまで、われわれの眼前に開かれてくるだろう。もしもわれわれが過去と未来を明確に見ることができるならば、現在という時間の感覚を失うに違いない。そして時間というものをもはや区別することすらできなくなるかもしれない。しかしこれはまったく別のことである。

 われわれが知っているのは、過去と現在についてのわれわれの知識が増えると、未来がますます予見できるようになるということである。もしも人が過去と現在の両方を明確に認識するならば、そしてこれまでのさまざまな機会に、こうした過去とこうした現在からどのような未来が生まれるかを経験してきたならば、未来というものは固定されたものであることを疑おうなどとは夢にも考えないだろう。その人は未来において何が起こるかを完璧に知っているのであり、そのことに自分の全財産でも賭けるだろう。

未来の確実さと道徳性

 これは大きな恩恵である。これを基礎として、道徳と科学を構築することができるようになるからである。未来が恣意的なものでも、変えることのできるものでもないことが、そして同様な現在のあとには同様な未来が必ず訪れることが保証されるならば、われわれはすべての計画をその基礎の上に立てることができ、われわれの生活のすべての意識的な行動をその確信に基づいて遂行することができる。もしもそうでないならば、われわれは道案内なしで行動するようなものである。われわれは自分の行動に信頼を抱くことができず、そのためにわれわれは決して行動しなくなるだろう。これからの行動の結果が、それ以前の行動の結果と同じであることに確信がもてなくなるからである。

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「機械と人間の類似性」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト