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第二次機械化時代の課題

アンドロイド/サイボーグ考(35)~バトラー『エレホン』を読む(9)

2014年1月28日(火)

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人間と機械が協調する「第一次機械化時代」

 これまでこの機械と人間の議論では、人間がいかに機械に依存しながら、そのことに無自覚であるか、そしてこのままでは機械が人間を無用な生き物にしてしまい、機械の文明が誕生するだろうということが語られてきました。著者はさまざまな比喩を使いながら、ときに回りくどい思考の回路を示していますが、言いたいことは明確でしょう。

 ここで、エレホンの文明における機械のこれまでの発展を、機械と人間の最初の協調の期間と考えることができるでしょう。これは言わば「第一次機械化時代」だったわけです。人間は自分の生活と労働を楽にするために道具と機械を発明しました。道具と機械は人間の発明したものであり、動物行動学や人間学では、人間は道具を使う動物と定義されます。一部の動物も道具を使うことが確認されてからは、たんにあるものを道具として使うだけではなく、道具を発明する動物、正確には道具を製造する道具を作る動物として定義されてきたのでした。人間が道具を発明しなかったならば、人間は野に生きる他の動物たち、人間よりももっと強い動物たちに負けていたでしょう。

 これまでの第一次機械化時代では、人間は機械よりも優位にありました。機械を発明したのは人間ですから、人間は機械を使う〈主〉であり、機械は主人に使われる〈奴〉の地位に立たされていたのです。しかしヘーゲルの主奴論が教えるように、主は奴の労働によりかかって生きるうちに、奴のように創意工夫をしながら汗を流して働くことを忘れてしまいます。そして道具や機械なしではもはや生きられない存在となっているのです。

 それでもこれまでは「労働力と機械は補完的な関係にあった」[1]と言えるでしょう。しかしこの関係もいまやある臨界点に到達しようとしています。それを何よりも象徴するのは、チェスや将棋でコンピュータが人間のチャンピオンを負かすようになったことです。労働するのは機械で、思考し、命令するのは人間であるはずでした。しかし機械が発達したために、今や思考することにおいても、機械は人間を凌駕するようになってきたのです。

 チェスや将棋は、ゲームであり、人間が規則を決め、主導している遊びです。しかしこの分野での機械の進歩は、主としての人間の地位を脅かすようになってきたのです。たとえば自動車工場では機械とロボットが溶接から組み立てまで、厳しい仕事をこなしています。もはや人間はそれを管理する地位に甘んじているだけです。そして今では思考という人間の本領の分野でまで、機械は人間に匹敵する能力を発揮し始めたのです。

「第二次機械化時代」の到来

 このことは、機械と人間との協力が新しい時代にさしかかってきたことを示しています。この新しい「第二次機械化時代」では、「動力の用途を決定する制御システムの多くを自動化し始めている。多くの場合、[機械は]人間よりも的確な判断ができる」[2]ようになっているのです。もはや人間は機械を使う主人ではなくなり、人間よりも的確に判断する機械が動きやすいように機械に奉仕する存在になりつつあります。「人間と機械はもはや補い合うのではなく、ますます置き換わるかもしれない」[3]のです。奴隷が主人になり、主人が奴隷になるヘーゲルの主奴論の弁証法が実現する時期が近付いているのです。

[1]トーマス・フリードマン「マシン・エイジ」。朝日新聞2014年1月23日。
[2]同。
[3]同。

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「第二次機械化時代の課題」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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