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聖なる愚か者の誕生

『一度、死んでみましたが』/『自殺』

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2014年3月12日(水)

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【私が編集した本読んで下さい!】

一度、死んでみましたが』神足裕司著(集英社)

担当:集英社 ビジネス書編集部 田中知二

 この本の最終校了の時、神足さんは、一編の文章を追加してきた。この原稿を入れると、落とさなければならない原稿も出てくるし、何か間違いが起こる。編集者としては避けたい事態。ただ、その原稿を読んで驚いた。娘さんの文子さんのことを、「文子はかわいい。犬のようにかわいい。いや、犬が文子のようにかわいいのかもしれない」と綴っていたのです。

 この一文は、大げさではなく、僕が今まで読んだ詩の中でも、一番美しい詩でした。突然の病い。死の淵からの生還。ままならない身体。受け入れがたい現実。計り知れない自分との対話の日々の中で、作者の魂は、純化して本質をつく言葉が溢れ出てきたのです。本の中の多少の誤植くらいどうでもいいことだと思いました。

 ワーグナーのオペラ「パルジファル」に、
 「共苦によりて知にいたる、聖なる愚か者、待ちわびよ」という一節があります。
  僕の目の前に、聖なる愚か者が、確かにいました。

「ボクには娘がいる。文子という。高校生かと思っていたら大学生だという。
ボクが寝ている間に大学生になっていたのだ。
まだ学生の子どもがいるのだから、のんびりと寝ているわけにも行かない。
顔を見ていると犬のようにかわいい。いや犬が文子のようにかわいいのだ。
無条件にかわいいのだ。
そんな娘にも苦労をかけたに違いない。ちょうど受験のときに意識がなかったわけ、だからね。ボクの面倒をよくみてくれる。女子大生なのに風呂の手伝いもしてくれるしトイレのも連れて行ってくれる。」( 友だちは宝だ)

 コラムニスト神足裕司さんは、『金魂巻』『恨ミシュラン』などのベストセラーでヒットを飛ばし、雑誌に何本もの連載を抱えた売れっ子。黒眼鏡に蝶ネクタイ、そして、ピカピカの頭をトレードマークにラジオにテレビに活躍していました。

 2011年9月3日。広島から羽田に向かう飛行機で、彼は倒れました。くも膜下出血、重篤なグレードⅤで意識は混濁。緊急手術となったのです。手術前に「会わせたい人がいたら、呼んだほうがいい」と、家族にはつらい言葉が投げかけられました。

 「死の淵というのを見たことがあると言うが、ボクはそこに行ったはずだが、見なかった。
 けれど、音楽や人の声は聞こえていたような気がする。
 ボクを呼ぶ声や娘と息子がくだらない話をしている声、奥さんが素っ頓狂な話をしている様子。うたた寝でもしているときのように、ずっと聞いていた。
 寝ては、いなかった。
 ずっと、起きていた。
 あるときはボクがもうダメかもしれないと話していたし、誰かが大声でボクを見て、泣いていた。けれど、それもすべて忘れてしまっていく。」(死の淵)

 1度目の手術後、もう1か所の脳動脈瘤も違う方法の緊急手術。2回目の手術の後、脳圧が上がってしまったため、翌日には頭蓋骨を外す手術も受けた。3回にわたる手術で、大量出血してダメージを受けた脳を休ませる処置がとられました。

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