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生命の神秘の謎の発見

アンドロイド/サイボーグ考(39)~メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読む(3)

2014年3月4日(火)

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クレンペ教授

 このようにして母を失ったヴィクターは故郷を離れてドイツの大学で学ぶことになります。この大学で彼は二人の教授のもとを訪ねますが、この二人の教授との出会いが、その後の運命を決定することになるのです。一人は啓蒙と近代科学の代弁者であるクレンペ教授で、もう一人が生命の秘密を解明することを目指すヴァルトマン教授です。

 クレンペ教授はヴィクターのこれまでの研究のすべてを否定し、初歩から近代科学を学ぶことを命じる正統的な学者です。ヴィクターがこれまで読んできた書物のタイトルを聞いて、彼は目を丸くして言います。「そんなナンセンスなものを学ぶことに、君の時間を費やしてきたのかね」と。

 ヴィクターは、そう言われることは覚悟していたので、「はい、そうです」と答えます。すると教授は次のように戒め始めました。「君がそんなことに費やしてきた一刻一秒の時間は、すべてまったくの無駄だったのだ。君はすでに破滅した体系と、使い道のない名前を記憶するために、時間を無駄にしてきたのだ。いったい君はどんな僻地に住んでいたのかね? 君が必死で学んだそれらのたわごとは、数千年の前のもので、古びた黴臭いものであることを、君に教えてくれるだけの親切な人はいなかったかのかね? まさかこの啓蒙の時代に、近代科学の時代に、アルベルトゥス・マグヌスとパラケルススの弟子に出会おうとは思わなかったよ。君、まったくの初歩から学び直さなければ駄目だよ」[1]

 クレンペ教授は、これから何を学ぶべきか、詳しいリストをくれるだけの親切心のある人でしたが、ヴィクターは近代的な自然哲学を専門とするクレンペ教授のもとで学ぶ気はまったくありませんでした。そこで学ぶのはたんな断片的な科学的な知識にすぎず、生命の神秘を探るという彼の野望を満たしてくれるものではないことは、すでに分かっていたからです。教授が求めるのは、「限りのない偉大さの夢想の代わりに、価値のない現実を受け入れること」[2]にほかならないと思えたからです。

ヴァルトマン教授の夢

 その後、ヴィクターは、大学でクレンペ教授と交替で化学を教えることになっているヴァルトマン教授の授業に出席してみました。この教授はクレンペ教授とは違って、化学のもつ偉大な夢を滔々と語ってくれます。「この化学という学問の古代の[錬金術の]教師たちは、不可能なことを約束し、実際には何も実現させませんでした。それにたいして現代の教師たちは、ほとんど何も約束しません。[錬金術の約束するようには]卑金属を金に変えることはできないことを知っているからであり、生命の霊薬というのも幻想であることを知っているからです。

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「生命の神秘の謎の発見」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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