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怪物と人間の対立の端緒

アンドロイド/サイボーグ考(44)~メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読む(8)

2014年4月8日(火)

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野生人についての哲学的な問い

 フランケンシュタインが創造した生き物は、やがて火の使用を発見し、それに関連して因果関係を学びます。湿った木の枝は燃えないし、乾いた木の枝はよく燃えるのです。その理由は何かと考えたわけです。そして自然の現象のうちに潜む原因と結果という因果関係を把握することができたのです。

 もちろん湿った木の枝ではどうして燃えにくいのか、燃えるというのはどのようなプロセスかという内的な因果関係を理解できたわけではありません。それでもこうするとああなる、ああするためにはこうする必要があるという素朴な因果関係が理解できるということは、野外で生活するためには重要な意味をもっていました。というのも、頭を働かせて、この因果関係に介入し、それを促進することを学べたからです。

 この生き物は、空気が動くと炎が大きく燃え上がることを観察し、そこに空気の流れと燃焼の因果関係をみいだしました。そして人為的に空気の流れを作りだしたらどうかと考えたわけです。そこで木の葉のたくさんついた小枝を束ねて、扇を作り、それを動かして、焚き火を燃え上がらせることができたのです。ここでこの生き物は、野生の動物とは違って、すでに道具を使うことを学んだのです。

 著者のメアリーは、ほんらいの筋とはまったく関係のないようにみえるところで、こうした予備知識のない野生人が知識を習得していくプロセスを細かに描写しているのです。その背後には、フランスの啓蒙主義以来の、そしてルソーの野生人とコンディヤックの大理石の石像という哲学的な問いが潜んでいるのは明らかでしょう。

文明の地への引っ越しと人間との遭遇

 やがてこの生き物は、森の中での自分の生活がきわめて不便なものであることを実感します。それは火を知り、道具を知ったことから当然に生まれるべき自覚でした。社会の中で生きている人々の残した物はたしかに便利で、ありがたいものだったのですが、その便利さを知れば知るほど、自分がそうしたものから隔絶していることを認識させられたからです。

 そこでこの生き物は、人間たちの暮らしている場所に引っ越すことを決めます。人間たちの仲間入りをしようとしたわけです。そうしてならない理由は、彼にはさしあたりは何もみつからなかったのです。そして人々の住む村に到着します。野菜や牛乳やチーズなど、村の家々には食欲をそそるものがたくさんあり、彼は喜んでそうした家の一つに入ろうとします。

 しかしその結果はさんざんでした。人々は彼をみると怪物でもみたかのように(怪物にみえるわけなのですが)逃げ出し、石をぶつけ、追い払ったのです。人間には未知のこの生き物と人間の遭遇は、このようにして悲劇に終わりました。こうして、この最初は無辜な存在であった生き物が、人間たちの悪意のために怪物となり、辛い生涯を送ることになる物語が、そしてその復讐の物語が始まるのです。

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「怪物と人間の対立の端緒」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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