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経済は「利己心」だけで動くのではない

アダム・スミスが説く「共感」の哲学(1)

  • アマルティア・セン

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2014年4月23日(水)

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 アダム・スミスの『国富論』と並ぶ主著である『道徳感情論』の新訳が、日経BPクラシックスのシリーズの1冊として、村井章子、北川知子訳で4月22日に刊行された。

 ペンギン版の原書“The Theory of Moral Sentiments”に収録されているノーベル経済学賞受賞者アマルティア・セン教授の序文が新訳にも収録されている。

 今回から4回にわけて、その序文の全文を掲載する。

 アダム・スミスの最初の著作である『道徳感情論』は、1759年初めに刊行された。当時グラスゴー大学の若手教授だったスミスは、自分のいささか過激な講義を土台に組み立てられた同書が世間にどう受け取られるか、もっともな不安を抱いていた。

 1759年4月12日、スミスはロンドンにいる友人のデービッド・ヒュームに売れ行きはどうかと訊ねている。ヒュームに脅されて「最悪の事態」を覚悟していたのだとしたら、スミスは「憂鬱なニュース」を受け取ったと言えよう。というのもヒュームが言うには、意外にも「世間は大いに褒めそやしているよう」であり、「のぼせた人々は待ち切れない様子で本を求め、知識階級は早くも声高に賛辞を述べているようだ」というのだから。

 同書の成功の先触れとなったこのうれしい知らせに続いて、すぐさま本格的な高い評価が寄せられる。かくして世界の知の歴史において真に卓越した著作の一つである『道徳感情論』は、出版後ただちに大成功を収めたのだった。

 この序文では、この注目すべき著作が250年を経てなお失っていない今日性をとくに取り上げることにしたい。スミスによる研究と分析は、世界に、とりわけ経済学にすでに多大な影響をもたらしてはいるが、なお学ぶべきことが少なくない。

 『道徳感情論』は当初大成功を収めたものの、19世紀の初め頃から言わば日陰の存在に後退してしまい、スミスは経済をテーマとして1776年に発表した第二の著作『国の豊かさの本質と原因についての研究』(『国富論』)の著者としてのみ知られるようになった。19世紀から20世紀にかけて長らく『道徳感情論』がなおざりにされたことは、2つの不幸な影響をもたらしている。

 第一に、スミスは倫理学における中立性と普遍性について多くの意味で先駆的な分析を成し遂げたにもかかわらず(『道徳感情論』はイマヌエル・カントの著名な論文群に先行する。この方面ではカントの方が影響力は大きいが、そのカントはスミスをひんぱんに参照している)、現代の倫理学と哲学分野でほぼ全面的に無視されてきた。

 第二に、『国富論』で提出された考え方は、『道徳感情論』ですでに練り上げられた思想の枠組みを顧慮せずに解釈されてきた(しかし『国富論』は『道徳感情論』から多くの題材を得ている)。このような解釈の仕方のために『国富論』の理解は一般に狭い範囲にとどまり、経済学にとってマイナスとなっている。

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