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言語の魅力に目覚めた怪物

アンドロイド/サイボーグ考(46)~メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読む(10)

2014年4月22日(火)

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隣家の不幸の理由

 この生き物は、隣の家の生活を興味深々で覗き見ています。すべてが新しいことの発見です。この生き物から見ると、この一家の生活はきわめて幸福なものと思えます。しかし誰もが不幸そうな様子をしています。若者と娘はときどき泣いているようです。この生き物はその理由を知りたいと思います。涙はつらさを示すものではないのだろうか、と思い惑うのです。

******

 この一家は完全に幸福というわけではなかった。若者と娘はしばしば二人だけになって、泣いているようだった。しかしわたしにはその理由が分からなかった。それでもとても気になったのだ。このように愛らしい生き物が不幸なのだとしたら、不完全で、孤独な生き物であるわたしが不幸であったとしても、不思議なことではないだろう。

 しかしこの穏やかに暮らしているように見える一家が、どうして不幸なのだろうか。彼らは気持ちのよい家に住んでいるし(少なくともわたしにはそう見えた)、あらゆる贅沢品をもっている。寒いときにはからだを暖める暖炉をもっている。空腹になれば、おいしいものを食べられる。素晴らしい衣服に身をつつんでいる。それにみんなで一緒に暮らしていて、言葉を交わし、愛情と心遣いのこもったまなざしを交わしあっている。

 それでは彼らの涙は、何を意味しているのだろうか。ほんとうに苦痛を表現しているのだろうか。わたしにはこれらの謎を解くことができなかった。しかしずっと注意していると、時間とともに、わたしにとって最初は謎と見えたものの意味が明らかになったのだった。

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「言語の魅力に目覚めた怪物」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官