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絶望では終わらない、絶望的な実話

『謝るなら、いつでもおいで』/『増補版 祖国と母国とフットボール』

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2014年5月28日(水)

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【私が編集した本読んで下さい!】

謝るなら、いつでもおいで』(川名壮志著、集英社)

 新聞の一面トップをかっさらうような惨劇は、いつも突然起こるもの――。

 2004年6月1日、九州のとある小さな小学校で、6年生の女の子がクラスメートを刺殺しました。それも給食の時間に、図工用のカッターナイフで。当時、新聞やテレビで連日にわたって、センセーショナルに報道されていたのを覚えておられる方も多いかと思います。

 川名壮志著『謝るなら、いつでもおいで』は、10年前に長崎県の佐世保市でおきた「佐世保小6同級生殺害事件」をとりあげています。

 加害者は11歳。殺された女の子は12歳でした。ふたりともまだランドセルを背負った幼い小学生です。娘を亡くしたお父さんは、毎日新聞社の支局長。そして、当時まだ駆けだしの新聞記者だった著者は、わけもわからないまま取材に走ることになります。

 ……とここまで書くと、「お固い“事件モノ”でしょ?」と思われがちですが、いえいえとんでもない! 「もう古い話じゃん」、いやいやちょっと待ってください。本書をそんじょそこらのノンフィクションと一緒にしてもらっては困ります。他に類を見ないような、ノンフィクション界の新風そのものであります。

著者は、被害者の父親の部下であり、毎日新聞社の記者

 まずひとつ。「被害者」、「加害者」、「マスコミ」といった、おたがい憎みあってもおかしくない三者のそれぞれの本音(かなり生々しい声なのですが)、それらがひとつの作品に収められていること。このような本は調べたかぎり、前例がありません。これは著者である川名さん自身が、娘を亡くした支局長の部下であり、まさにひとつ屋根の下で、おなじ釜の飯を食う仲だったという、きわめて稀な立場におかれていたことで、奇跡的に実現したものです。

 いままでは報道する「マスコミ」側だったのに、一転して報道される側になった「被害者」の父親。

 障害を抱え、仕事を失い、家族が離散した後もひとり山間の一軒家に残った「加害者」の父親。

 身内のようにかわいがってくれた上司の事件を取材し、記事にしなければいけない違和感に苦しむ「マスコミ」としての筆者。

 第二部では、この三者の物語がぐんぐん加速していきます。私も原稿を読んだとき、こちらがなんとなくイメージしていた加害者像、被害者像が、音をたてて崩れていきました。ページを繰る手が止まらなくなりました。

 そして、ふたつめ。本作は、一見特殊な事件を扱っているようではありますが、「普遍性」を強く意識しており、どんな年齢のどんな立場の人が読んでも、自分の生活と重なりあう部分があることです。

 川名さんはこの話を書くにあたって、「ふだんはノンフィクションなんか手に取らないという人にこそ、読んでほしい。特に働くお父さん、お母さんたちに読まれたい」と強く望み、それを意識して書きあげました。そのため、事件モノにありがちな、とがった表現や難しい専門用語などをできるだけ少なくして、やわらかい文芸書のようなトーンに仕上がっています。そこは著者がいちばん心を砕いたというだけあって、実際かなり読みやすくなっています。事実をつぶさに拾いあげていく姿勢は損なわず、なおかつ、これは家族の話であり親子の話なんだ、という筆者の思いが、そのまま形になりました。

 続いて3つめ。とりわけ声を大にしてお伝えしたいのが、読後感のあたたかさです。

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