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生涯最大の賭け

アンドロイド/サイボーグ考(49)~メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読む(13)

2014年5月27日(火)

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知の毒

 このようにしてこの生き物は、文字を習得して書物を読むことができるようになってから、人間について多くのことを学んだのでした。しかしこの生き物が読むことができたのは、印刷された書物だけではありませんでした。彼はある手書きの文書をみつけたのでした。それは彼がフランケンシュタインの実験室から「借りて」きた服のポケットに入っていたメモでした。そのメモには何が書かれていたでしょうか。

 そうです。この生き物の創造主であるフランケンシュタインが、人造人間を作るために残した「この生き物が創造されるまでの四か月の日記」でした。これはこの生き物にとっては、呪わしい記録でした。この生き物は文字という知を学ぶことで、人間の歴史の悲惨さを知るとともに、自分の出生の秘密のおぞましさを知ることになったのです。

 文字の知は彼にとっては、自己の起源を知り、自分の誕生の秘密のおぞましさを知るという「毒」を与えたのです。それは自分が人間たちによって愛されず、怪物扱いされることにたいする嫉妬の思いとともに、この生き物にとっては致命的な毒となったのでした。その思いを語る彼の言葉に耳を傾けてみましょう。

******

 わたしの忌まわしい出生にまつわるすべてのことが、そこには書かれていた。このわたしを生み出したさまざまな嫌悪すべき状況が、こと細かに書き記されていた。わたしという忌まわしくもおぞましいものについて微細に記述してあった。お前の[ここでこの怪物はフランケンシュタインにお前と語りかけているのです]恐怖を描写する生き生きとした言葉によって、わたしの恐怖もまた消しがたいものとなった。読んでいて、わたしは胸が悪くなった。

 「わたしがこの生をうけた日の呪わしいことよ!」と、この日記を読みながらわたしは叫んだ。「呪われた創造主よ! わたしを創造したお前までが、おぞましさに顔を背けるような生き物をどうして造りだしたのか? 神は人間を哀れんで、自分に似た姿に、美しく魅力的な生き物として創造したのだ。しかしわたしの姿はお前の汚らわしい姿にも似たものだ。似ているだけになおさらぞっとさせられるのだ。サタンには仲間がいた。自分を崇めてくれ、勇気を与えてくれる同類たちがいた。それなのにわたしは孤独で、誰にも嫌われているのだ」。

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「生涯最大の賭け」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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