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ウィリアムの死

アンドロイド/サイボーグ考(51)~メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読む(15)

2014年6月10日(火)

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フランケンシュタインへの要求

 この年の秋はこのように、この怪物となった生き物が、生涯の唯一の愛の可能性を賭けていた一家を皆殺しにすることで終わりました。そして怪物は完全に孤独な身となりながらも、自分を創造したフランケンシュタインしか頼りにすることができる人物がいないことに気付きます。

 もちろんこの怪物はすでに自分をこのような姿に創造し、創造した後で自分を忌み嫌って逃げ出したフランケンシュタインに恨みを抱いていました。しかしどれほど考えてみても、フランケンシュタインしか自分の心を語り、庇護を求めることのできる人物はほかに思いつかなかったのです。怪物はこう語っています。

******

 お前には憎悪の感情しか抱いていなかったが、ほかに助けを求めることのできる人はいなかった。しかしお前はなんと、心をもたぬ無慈悲な創造主であることだろう。お前はわたしに知覚する器官と感じる心を授けたのに、わたしをそれっきりで放り捨てておき、人々から軽蔑され、恐れられるにまかせておいたのだ。

 しかしわたしが憐れみと救いを求めることができる人物は、お前しかいなかった。形だけは人間にみえるほかの者たちに、正義を求めても空しかった。わたしが正義を要求できる相手は、お前だけだったのだ。

******

 こうして怪物は創造主に、「正義」を、いわばおとし前をつけることを求めて、かつて学んだ地理を頼りに、ドイツからスイスへと、ジュネーヴへと向って旅をつづけます。怪物としての外見を維持したまま、人間の共同体に入ることもできないままで流浪の旅をつづけることは、困難なことだったはずです。昼間は人目を避けて隠れ、夜だけ移動するという流浪の旅でした。そしてその旅の途上で、別の出来事が怪物に衝撃を与えます。

 森の中で、ふざけてボーイフレンドから隠れていた少女が川に落ちたのを救ったところが、そのボーイフレンドが怪物をみて誤解し、もっていた銃を発砲し、怪物を傷つけたのでした。それをきっかけとして、フランケンシュタイン一人のへの怒りが、人間という生き物全体への怒りに変わることになったのです。そして怪物は「すべての人間を永遠に憎み、復讐するという誓いをたてた」のでした。

 こうして春になってから、やっと怪物はジュネーヴにたどりつきます。そこで別の不幸な出来事が起こります。この出来事については、フランケンシュタインの「表の物語」で、人間の視点から語られています。まだドイツのインゴルシュタットで学生生活を享受していたフランケンシュタインのもとに、父親から弟のウィリアムの死を告げる次のような手紙が届いたのです。

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「ウィリアムの死」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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