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あの「ドーキンス」の、つくりかた

『好奇心の赴くままに ドーキンス自伝1』/『コサインなんて人生に関係ないと思った人のための数学のはなし』

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2014年7月2日(水)

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【私が編集した本読んで下さい!】

好奇心の赴くままに ドーキンス自伝1』リチャード・ドーキンス著、垂水雄二訳

担当:早川書房 第1編集部 伊藤浩

 日本のテレビドラマにも小道具として登場するほど著名な科学解説書、『利己的な遺伝子』の著者リチャード・ドーキンスは、いまや無神論者の心の拠り所、『神は妄想である』のドーキンスでもあり、生物学の枠をこえて世界に発言する人物ですが、ドーキンス自身にかんする伝記的な事実はあまり知られていません。というのも、そもそも本人があまり自分について語ってこなかったらしいからです。

 『悪魔に仕える牧師』という本では、一部のエッセイで、生まれ育ったナイロビのことや、感銘をうけた先生と学校の話について触れており、ほかにも自伝的なことを書いた未訳の文章もありますが、どれも短いものでした。

 ですので、ドーキンスはあまり自分語りに積極的ではないように思われましたし、本書の訳者の垂水氏も「訳者あとがき」でお書きのように、「彼が自伝など書くはずがない」と思っておられたかたも多いのではないでしょうか。

 しかし2013年、2部作の第1部という形で(これはドーキンス本人の予告です)、AN APPETITE FOR WONDERという本格的な自伝が上梓されました。本書、『好奇心の赴くままに』はその全訳です。「待望の」という言葉がふさわしいこの本を、原書ですでにお読みの日本のドーキンスファンも多いことでしょう。

 しかし、ダーウィンの熱烈な擁護者、あるいは戦闘的な無神論者のドーキンスのイメージからは意外なほど、本書のタッチは落ち着いたユーモアにあふれた、軽やかなもののように思えます。

 私は翻訳書の編集者としてドーキンスの本に数冊かかわってきましたが、思いもかけない記述にあふれた本書の編集作業は、本当に楽しいものでした。

 本書を手に取られる読者のみなさまには、あまり構えず、ドーキンスのゆったりした語りに身をゆだね、細部をも楽しまれることをお勧めしたいところです。

 邦訳書では冒頭におさめた、32ページにわたるカラーの口絵写真ですが、セピア色の祖先の肖像がいくつも登場します。本文で3、4代前までさかのぼって始まるドーキンス家の話は、せっかちな読み手をとまどわせるペースで紐解かれます。

ドーキンスの母が描く一家のアフリカ遍歴

 語りにドライブがかかってくるのは、ドーキンスの両親が登場してからでしょうか。アフリカで、夫の従軍先に(内緒で)ついていってしまうドーキンスの母の肖像は、ちょっと感動的なものがあります。当時の写真も口絵に収められていますが、面白いのは、彼女が描いたドーキンス一家アフリカ遍歴のスケッチです。母に手を引かれて歩く幼少時のドーキンスの姿が、ほほえましく描かれています。ドーキンスの筆になる本文の記述とあわせて読んでいただくと、彼が過ごした幸せな子供時代の雰囲気が伝わってきます。

 意外なのは、ドーキンスの言葉に対するこだわりでした。

 コーンウォールというイングランドでも特異な地域の出身である祖母は、コーンウォール方言でドーキンスに詩を語って聞かせたそうですが、それを覚えている、といって、コーンウォール方言をそのままに再録しているのです。得意げになっているドーキンスが小憎らしいほどでもありますが、ここを訳すことになった訳者の垂水氏は相当な苦労を強いられたそうです。

 かくいう編集者の私も、ここにはじつは泣かされました。ドーキンスの脚注が詩についているのですが、正直言って、組版する立場からはめんどうなことこのうえありませんでした! しかし、この先祖の肖像や言葉へのこだわりといった要素が、あとになってこだまのように行間から聞こえることになるわけで、伝記文学の書き手としてのドーキンス、なかなか凡手ではありません。

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