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伴侶をもちたいという願い

アンドロイド/サイボーグ考(53)~メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読む(17)

2014年6月24日(火)

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怪物の要求

 このように怪物は創造主であるフランケンシュタインに迫ったのでした。怪物はさらに言葉を継いで、自分の要求を明確にします。「お前はわたしのために女性を創造しなければならないのだ。この女性とともに暮らすことで、わたしは心の通い合うつきあいをすることができるだろう。それはわたしが生きるためにはどうしても必要なことなのだ。そしてこれを実現できるのは、お前だけなのだ。わたしはそれをお前に要求する。この要求をお前は、拒む権利はないのだ」。この要求にたいして、ヴィクターはどう応じることができるでしょうか。

*  *  *  *  *

ヴィクターの拒絶

 「お断りだ。わたしをどれほど拷問にかけようとも、わたしはそんなことを認めるつもりはない。お前はわたしを世界でもっとも惨めな人間にすることはできるだろう。しかしわたしを自分から見てもっとも卑しい人間にすることはできないのだ。わたしがお前のような生き物をさらにもう一人作ったならば、二人分の邪悪さでこの世を破滅させてしまうだろう。どこかにいってしまえ! お前の要求への答えはこうだ。どれほど拷問しようとも、絶対にそんなことをすることはないだろう」。

怪物の論理

 すると鬼のような奴は答えました。「お前はまちがっている。わたしはお前を脅しているつもりはない。納得してほしいと考えているのだ。わたしはたしかに邪悪な存在だ。しかしそれはどうしてだろうか。それはわたしが惨めな存在だからだ。わたしが惨めなのは、すべての人間がわたしを忌み嫌い、憎んでいるからだ。

 お前はわたしを創造した者であるのに、わたしをずたずたに引き裂きたいと望んでいるし、それを実行して勝ち誇ろうとしている。そのことを忘れないでくれ。わたしを哀れに思ってくれない相手を、わたしが哀れに思うべき理由はあるだろうか。もしもお前が自分の手で作りだしたわたしの肉体を、そこにある氷の裂け目に突き落として殺したとしても、お前はそれを殺人とは考えないだろう。

 わたしは、自分を軽蔑している人間を、尊敬する理由があるだろうか。しかしその相手がわたしとともに暮らし、わたしに親切な振る舞いをしてくれるのであれば、わたしはその人を害するようなことはないだろう。そして考えられる限りの善行を尽くして、自分を受け入れてくれたことに感謝するだろう。しかしそのようなことはありえないことだ。人間にそなわる感覚というものが障壁になって、人間はどうしてもわたしを受け入れることができないのだ。

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「伴侶をもちたいという願い」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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