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フランケンシュタインの復讐

アンドロイド/サイボーグ考(56)~メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読む(20)

2014年7月15日(火)

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 フランケンシュタインは「フランケンシュタイン・コンプレックス」に襲われて、怪物の顔に「この上ない悪意と裏切りの感情」を読み取ったために、約束を破って、怪物の「伴侶」となるべきものを破壊してしまいます。そのとき怪物はそれを目撃していたのでした。

*  *  *  *  *

怪物の威嚇

 そのときわたしには、廊下を歩く足音が聞こえてきました。そしてドアが開き、わたしが恐れていたように、あの怪物が姿を現しました。あいつはドアを閉めると、わたしに近寄るなり、押し殺したような声で言いました。

 「どういうつもりだ、お前は作りかけていたものを途中で破壊してしまったではないか。お前はわたしとの約束を破るつもりなのか。わたしはこれまで苦労し、惨めな思いをしながら、じっと耐えてきたのだ。お前のあとを追ってスイスを離れ、ライン川の岸辺を、そしてライン川の柳の島を、ライン川の近くにそびえる山々の頂きを、ひそかにめぐり歩いてきたのだ。イングランドのヒースの原野に、スコットランドの荒れ地に、何か月も潜み、数えきれないほどの疲労と寒さと飢えの日々を耐えてきたのだ。それなのに今、お前はわたしの希望を破壊しようというのか」

 「消え失せろ! お前との約束など守るつもりはない。わたしは金輪際、お前と同じようなものを、お前と同じような歪んだ邪悪な生き物を創造するつもりはない」

 「奴隷のようなやつめ。これまではお前の理性に訴えかけてきたのだが、今ではお前は、理性に訴えかける価値もない輩であることは明らかだ。わたしには力があることを、忘れたわけではないだろうな。お前は自分を不幸な人間だと思っているかもしれない。しかしわたしはお前をさらに不幸な目に合わせてやることだって、生きていて太陽の光を目にすることすら不幸なことだと思うようにしてやることだってできるのだ。たしかにお前はわたしの創造主だ。しかしわたしはお前の主人なのだ。わたしに服従するがよい」

 「わたしはもう、かつてのように弱い人間ではない。お前が力を振るってみせるべきときがきたのだ。お前がどれほど脅そうとも、わたしに邪悪な営みをさせることなどできない。わたしを脅せば脅すほど、お前に悪をなす伴侶を創造してはならないというわたしの決意が固くなるだけだ。この世に死と悪をもたらすことを喜びとするような悪魔を、地上に作りだすようなことを、わたしが正気でやると思うのか。消せうせろ。もうわたしの考えは変わらないからな。お前が何を言おうと、わたしの怒りが強まるだけだ」

怪物の呪い

 怪物はわたしの決意の固さを感じとったようでした。怒っても何もできないことに気付いて、歯ぎしりをして、叫びました。「人間は誰もが、胸にかきいだく妻をみつけ、獣もすべて伴侶をみつける。それなのにわたしだけ孤独に生きろというのか。わたしにもかつては人を愛する心があった。しかしその返礼として人々に憎まれ、蔑まれたのだ。憎むというのなら、憎むがよい。しかしすぐに落雷がお前の幸福を永遠に奪いさることだろう。わたしが不幸のどん底に這いつくばっているというのに、お前一人が幸福になっていることなど許されるものか。

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「フランケンシュタインの復讐」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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