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人間の大量生産

アンドロイド/サイボーグ考(58)~ハクスレー『すばらしい新世界』を読む(2)

2014年7月29日(火)

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人間の大量生産方式

 さて、『すばらしい新世界』を読み始めることにしましょう。この物語は一九三二年に執筆されました。著者は小説家のオルダス・ハクスレーです。ハクスレーは一九二八年に風刺小説の『恋愛対位法』で有名になり、後期の作品としては一九三六年の『ガザに盲いて』が知られています。この作品はその中間の時期に書かれた反ユートピア小説として有名な作品です。

 この小説は、フォード紀元六三二年の未来のイギリスを舞台にしています。フォードはもちろんヘンリー・フォードですね。T型フォードを生産して、初めて自動車を大衆にも手に入れることのできる消費財としました。この物語では、T型フォードが発売された日を「フォード記念日」として祝い、その年を紀元元年としているようです。T型フォードは一九〇八年に発売され、一九二七年まで一五〇〇万台が販売されたといいます。この紀元六三二年は西暦では二五四〇年に相当します。

 フォードの発明を紀元とするくらいですから、この文明はキリスト教の伝統を放棄し、フォードを神として崇めています。「オー・マイ・ゴッド」というよく口にされる言葉の代わりに「オー・マイ・フォード」と言い、「サンクス・ゴッド」と言う代わりに、「サンクス・フォード」と言うのが決まりになっています。部品の標準化とベルトコンベアによる流れ作業を中心とした大量生産方式のフォーディズムが、社会の隅々にまで浸透していて、無神論的な科学万能主義がすべてを決定する社会です。

 この社会では女性を妊娠という労苦から解放するという名目のもとで、女性の卵子を採取してそれを人工受精させてから、さまざまな刺激によって分割させる方式が採用されています。ワトソンによってDNAの二重螺旋構造が解明されるのが一九五三年ですから、この時点では遺伝子操作ではなく、人工受精させた卵子の処理によって、人間の大量生産方式が実現しているのです。

 この物語は、「中央ロンドン人工孵化・条件反射育成所」という研究所で、研修生たちに、研究所の所長がこの人間の大量生産方式を説明するところから始まります。所長の説明に耳を傾けてみましょう。この大量生産方式の何よりの特徴は、人間が誕生する瞬間には、すでにアルファ階級からエプシロン階級にいたまでの階級カーストに所属するように決定されていることです。

*   *   *

人工受精方式

 所長はまず、卵子の最初の外科手術による処置について説明した。「この手術はもちろん社会の福祉のために、人々が自主的に卵子を提供することで始められます。もちろん給料六ケ月分のボーナスが支払われるのは当然のことですが」。そして取り出した卵子を生きたままさらに成熟させるための技術について説明した。さらに分離され、成熟させられた卵子を保存するために漬けておく液体について、そのための最適な温度、塩度、粘度について説明された。

コメント1件コメント/レビュー

これがクローンにつながっていくのかな。(2014/07/29)

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「人間の大量生産」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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これがクローンにつながっていくのかな。(2014/07/29)

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