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レーニナとバーナードの初めてのデート

アンドロイド/サイボーグ考(64)~ハクスレー『すばらしい新世界』を読む(8)

2014年9月9日(火)

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 さてレーニナはバーナードが少し気に入っています。バーナードは、この研究所でも、特別な資格を認められた優秀なスタッフなのです。しかしどうも変わったところがあり、それが心配なのです。ある晩、レーニナはベッドを共にしていたヘンリーにバーナードをどう思うかと尋ねてみました。彼はバーナードを犀に譬えて、いつもながらのキッパリとして調子で、こう説明します。

*   *   *

犀のような鈍感なバーナード

 「犀には、芸を教えられないだろう。人間のうちにも、犀のように鈍いやつがいるのさ。そうしたやつらは、条件反射に正しく反応できないのだ。哀れなやつさ。バーナードもそんな犀のようなやつなのさ。あいつがラッキーだったのは、まあ仕事ができるということだけさ。それでなければ所長が研究所に置いておくはずがないだろ」。そしてヘンリーは慰めるように、こうつけ加えた。「それでもあいつはそれほど害のないやつさ」。

 それほど害のないやつ。まあそうかもしれない。しかしかなり気に障る人物でもある。まず何よりも、すべてを自分たちだけでこっそりと隠れてやりたがるという異様なまでの情熱がある。こっそりと隠れてやろうとするということは、実際には何もしないということだ。自分たちだけでこっそりと隠れてやることが「できる」ことなど、そもそもあるのだろうか。もちろん、ベッドでの営みは別だ。しかし年がら年中ベッドでいちゃついているわけにもいかない。

バーナードとの初のデート

 そんな、こっそりと隠れて自分たちだけでやれることなど、あるだろうか。ほとんどないのだ。レーニナは、バーナードと初めてデートしたときのことを思い出す。よく晴れた午後だった。レーニナが提案したのは、まずトーキー・カントリー・クラブのプールで泳いで、疲れたらオクスフォード・ユニオンでディナーにするという案だった。ところがバーナードはそんな人込みは嫌だというのだった。そこでレーニナは、セント・アンドリュースの電磁ゴルフ場でゴルフ・コースを一ラウンド回ることを提案した。しかしバーナードはそれも駄目だという。電磁ゴルフなど、まったくの時間の無駄だというのだ。

 レーニナは驚いて尋ねた。「でも時間って何かのために使うものなの?」。
 バーナードの考えでは、時間とはイングランド北部の湖畔地方を訪れるためにあるものらしい。というのも、彼はそのときレーニナにそう提案したからだ。二人でヘリで湖畔地方を訪れよう、ヘリでスキドウ山の頂上に着陸し、そこで二時間ほど、ヒースの荒れ地を散歩してはどうか、というのがバーナードの提案だった。「君とふたりきりになれるしね」。

 レーニナは驚いて反論した。「だって夜はふたりきりじゃないの」。バーナードは顔を赤らめて、目を背けてつぶやいた。「ぼくが言いたいのは、ふたりきりで話したいってことさ」。

 「話すって? 何について話すの?」。レーニナには、話しながら散歩するというのは、初めてのデートで午後の時間を過ごすには、あまりにも風変わりな方法に思えたのだった。

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「レーニナとバーナードの初めてのデート」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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