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リンダと所長の出会い

アンドロイド/サイボーグ考(70)~ハクスレー『すばらしい新世界』を読む(14)

2014年10月21日(火)

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帰国して

 こうしてバーナードとレーニナは休暇を終えて、もとの理想国に戻ってきたのでした。レーニナは野蛮人地区での異様な経験に疲れはてて、多量のソーマを摂取して、月世界に旅行することにしました。一八時間は目覚めないでしょう。しかしバーナードには別の仕事があります。というのも、休暇に出発する際に、すでに彼を僻地に飛ばす決定が下されたことを知っていたからです。それに対処する必要があります。

 バーナードがジョンを誘ったのは、その目的で利用するためでした。リンダが所長とともに野蛮人地区を旅行し、行方不明になって置き去りにされたガールフレンドであることはたしかです。そしてリンダには文明人との間の息子がいます。ジョンの父親は、所長であるはずです。それを利用することを考えたのでした。そしてバーナードは帰国するとすぐに、総統のオフィスに電話して、総統と話をつけます。総統はジョンに強い関心を示したのでした。

所長との対決

 所長はバーナードが帰国するとすぐに呼び付けて、研究所のスタッフ全員を集めて、こう宣言します。「バーナードは、スポーツやソーマにたいして異端的な見解をもっている。性生活はスキャンダラスなほど、正統的なありかたに反している。われらのフォードさまの教えに従うことを拒み、勤務していない時間の間は『幼子のように』振る舞うことを拒んでいる(所長はそう言いながら[十字ではなく]T字を切った)。彼は自分が社会の敵であることを明らかにしたのである。諸君、この男は自分が、すべての秩序と安寧を転覆する者であること、文明そのものに謀反を起こすものであることを明らかにしたのだ」。

 「そのためにわたしは彼を解雇し、この本部で彼が占めている地位から、不名誉の罪で放逐することを提案するものである。わたしは彼をもっとも下級の支部に転出させることを、人々の住む主要なセンターからできる限り遠い場所に放逐することを提案する。アイスランドであれば、彼のフォードさまにふさわしくない先例によって、他の人々を誤った道に進むように唆すことがもっとも少ないだろう」

 こうして所長はバーナードの追放を「提案」した後に、彼に最後の弁明の機会を与えようとします。その機会をバーナードは巧みに利用します。彼が追放されるべきではない理由として、ある人物を紹介したいというのです。バーナードは廊下で待っているその証人を、部屋に呼び入れます。

*      *      *

リンダの登場

 人々ははっと息をのみ、驚きと恐怖から呟くような声をだした。ある若い娘は悲鳴をあげた。別の者はよく見えるように椅子の上に立ち上がったが、驚いたあまり、多数の精子の入った二本の試験管を倒してしまった。部屋に入ってきたのはリンダだった。だらしなく太ったリンダは、部屋にいる多数の若い人々のひき締まった身体やたるみのない顔に囲まれると、まるで中年らしさが露出した異様で恐ろしい怪物のように見えた。リンダは崩れて色あせた微笑をコケティッシュな表情で浮かべながら、巨大なヒップを振りながら部屋に入ってきた。本人はそれでお色気を振りまいているつもりだったのである。

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「リンダと所長の出会い」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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