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バーナードの栄光と悲惨

アンドロイド/サイボーグ考(72)~ハクスレー『すばらしい新世界』を読む(16)

2014年11月4日(火)

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 さて、リンダはこのようにしてこのようにして理想の国でソーマの力を借りて、天国に近づいています。これにたいしてジョンは人々の憧れの的となりました。そのユニークな思想と風貌で、あらゆる人々がジョンに会いたがるのです。そして野蛮人のジョンを握っているのはバーナードでした。

*      *      *

バーナードの栄光

 ジョンに会おうとするならば、公認の保護者であるバーナードに頼むしかなかった。バーナードは生まれて初めて人並みの人間と扱われるだけではなく、重要人物となったのだった。……階級決定部長補佐がやってきて、バーナードの開くパーティにいつか呼んでほしいと頼むのだった。女性たちときたら、バーナードがパーティに招いてもよいという素振りをするだけで、彼になびくのだった。そして彼は自分の好きな女性を手に入れることができたのだった。……

 こうして時が経っていった。バーナードの頭は自分の成功でしびれてきた。バーナードは、良質な麻酔薬が効いてきたときのように、世間にたいして穏やかな気持ちで接することができるようになった。それまでは世間というものに非常に大きな不満を抱いていたものだが、そんな不満は消え失せたのだった。世間がバーナードを重要人物として認めるかぎり、バーナードにとっても世間の秩序は正しいものに思えた。

バーナードの異端思想の意味

 しかし成功に酔ってバーナードは世間と和解したものの、世間の秩序を批判する特権だけは放棄しようとはしなかった。世間の秩序を批判すると、自分が重要人物であると思えたし、自分がさらに大きなものに感じられたからである。それにバーナードは、世間には批判すべきものがほんとうにあると考えていたのだ。ただし同時に、バーナードは成功して、自分が好きなすべての女性を手に入れられることが気にいっていたのだ。

 今では野蛮人に会いたくてバーナードのところに多くの人がやってきてご機嫌をとるのだったが、こうした人々を前にしてバーナードは異端的な見解をまくしたてた。そして彼のこうした見解を、人々はいんぎんに傾聴したのだった。しかし背後では人々は不満そうに首を振っていた。そして「あの若者の将来はきっと良くないね」というのだった。彼らはやがてバーナードの将来を台無しにするために、自分でも力を尽くそうと考えていただけに、こうした予言は自信たっぷりに語られるのだった。「その時になってまた別の野蛮人が現れて、彼を救うというようなことにはならないだろうさ」。

 しかし当面のところは、まだ一人目の野蛮人が彼のもとにいるのだった。そこで人々はバーナードに礼儀正しく振る舞っていた。そして人々が彼にいんぎんに振る舞えば振る舞うほど、バーナードは自分が高みに昇ってゆくような気分だった。バーナードは自分が偉大な人物になったように感じていた。偉大であるだけではなく、空気よりも軽く、高みに上昇していくようだった。「空気よりも軽くね」とバーナードは説明した。……

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「バーナードの栄光と悲惨」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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