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レーニナの恋

アンドロイド/サイボーグ考(73)~ハクスレー『すばらしい新世界』を読む(17)

2014年11月11日(火)

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レーニナ像

 さて、バーナードと一緒に野蛮人地区を訪問したレーニナは、どうなったでしょうか。これまでのところでレーニナについて描かれてきたことを要約してみましょう。レーニナは第一に、ごくふつうの理想国の女性として描かれています。万人は万人のためというモットーを素直に信じていて、すべての女性はすべての男性とベッドをともにすべきだと信じています。

 また条件反射教育がよく機能していて、教えられたことには忠実に従います。ソーマが手放せないのも理想国の住民らしいところです。バーナードに誘われても、休暇を利用して孤独になれる荒野などを訪問することなどは真っ平だと考えています。それよりも人々がたくさん集まるスポーツの競技会を好むのです。

 ただし少し風変わりなところがあります。それは多くの女性からつまはじきされているバーナードを好きになったことです。それに一人を好きになると、ほかの人とベッドをともにするのは面倒になるのも、この理想国の女性らしくないところです。友人に、そんなふうに振る舞っていると、所長に眼をつけられるわよと、警告されるほどです。それに野蛮人地区に行ってみたいと望んでいるのも、ふつうの「女の子」ではないところです。

 こうした少し変わったところのあるものの、理想国のパターンからそれほどずれているわけではないレーニナは、ジョンを伴って帰国してからどのように変わったでしょうか。それはジョンが人気の的になるとともに、レーニナは、友人たちから、とても運のいい人と、うらやましがられるようになったことです。

*   *   *

レーニナの幸運

 レーニナは運がよかった。バーナードと二人で、野蛮人のすばらしい名声のお裾分けにたっぷりとあずかることができたのは、幸運だった。本人はごくありきたりの女性であったのに、当時のトップスターの名誉のおこぼれにありついたのは、幸運だった。フォード女性協会の理事から、彼女の体験について講演してくれと頼まれたのは、その証拠ではないだろうか。アフロディテウム・クラブのディナー・パーティにも招待されたではないか。さらに触感ニュースにも出演し、視覚的にも、聴覚的にも、触覚的にも世界中の無数の人々の前に、はなばなしく登場したのだった。

 著名人たちがレーニナに敬意を表明したことも、彼女の自尊心をくすぐった。世界総督の駐在第二秘書官は、レーニナを晩餐と朝食に招いた。この前の週末は、フォード最高裁判所の所長とともに過ごしたし、カンタベリー大聖堂の大僧正と週末を過ごしたこともあった。内分泌物・外分泌物会社の社長はしょっちゅう彼女に電話をかけてくるし、ヨーロッパ銀行の副総裁とフランスのバカンス地ドーヴィルに出かけたこともあったのである。

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「レーニナの恋」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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