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悲劇の不要な社会

アンドロイド/サイボーグ考(76)~ハクスレー『すばらしい新世界』を読む(20)

2014年12月2日(火)

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主要人物たちの運命

 さて、これまでシェイクスピアに心酔している野蛮人ジョンの母親リンダ、野蛮人を利己的な意図によって文明国に連れてきたバーナード、ジョンが一目で惚れ込んだレーニナが、野蛮人とともに文明国に戻ってきてからどうなったかが描かれました。そしてジョンとレーニナの悲しく滑稽な恋愛騒動も描かれました。

 主要人物たちの運命はほぼこれで決まったようなものでした。リンダはまもなくソーマ中毒で死ぬでしょう。レーニナはジョンへの恋を諦めるしかないでしょう。バーナードは策略が成功して有名人になったものの、ジョンがおとなしく彼にしたがって人々を迎えてくれないため、爪弾になっています。天に昇るのが早かっただけに、天からの墜落は急激なものになるでしょう。

ジョンの「反乱」

 あとは文明国の流儀に納得できない野蛮人のジョンがどうなるかというところに読者の関心は集中します。物語ではジョンはリンダの死に立ち会い、ソーマが毒であることを改めて実感します。そして「こんな恐ろしいものを飲んではだめだ。これは毒だ! これは毒だ!」と叫ぶのです。そしてそこにあったソーマを窓から投げ捨てて、労働者であるデルタ階級の人々に「自由であれ」と呼び掛けます。「君たちは自由な人間になりたくはないのか。人間らしさとはどのようなものか、自由とはどのようなものか、分からないのか」と。そこに警察がやってきて、ジョン、バーナード、そして彼らの友人のヘルムホルツを、総統のもとに連行してゆくのでした。

 総統に呼ばれたバーナードは、おそらく北の僻地に追放されるでしょう。それではジョンはどうなるでしょうか。以下の場面は総統が、ジョンたちを謁見するところから始まります。総統がバーナードに特権を認めたのは、野蛮人に強い関心を抱いたからだったのでした。

*      *      *

文明の価値について

 総統のムスタファ・モンドは三人と握手をしたが、話しかけたのは野蛮人にだった。「どうやら文明はお好きではないようだね、野蛮人君」。野蛮人は総統の顔を見詰めた。ジョンは前から準備していた。総統に嘘をついてやろうと思っていたのである。あるいは怒鳴ったり、不機嫌な様子で、話すのを拒んでやろうかとも、考えていたのである。ところが総統が知的な人間であり、機嫌良さそうに話しかけてきたため、考えていることを正直に話してみようと思い直したのだった。「ええ、実のところはそうなんです」。ジョンはそういって、首を振った。

 バーナードはどきっとして怯えた顔になった。総統はどう思われるだろうか。文明は気にいらないと、総統に広言するような人物の友人であることが、不利にならないだろうか。「でも、ジョン」とバーナードは言いかけた。ただ総統ににらまれて、また卑屈な表情で口をつぐんだのだった。

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「悲劇の不要な社会」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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松﨑 曉 良品計画社長